美建築の国

 たっったたたったたた...

翠のボディを持つ鋼の馬が走っていた。

はるか前方には国の壁が見える。

「ししょー、見えてきましたよ壁〜。」

小さいはずの運転席に、

余裕ができるほど華奢な少女...。

「むっ」「どしたのー」「いや、なんでも。」

少年、ルアは背部に伸びる

パイプに向かって語りかける。

そのパイプは後ろに貼られたテントに伸び、

「割と遠かったねぇ」

声が帰ってくる。

声の主は、銀の髪にパステルピンクの瞳、

そして猫の様に細い瞳孔を持つ女。

彼女の名はシュネー。

シュネーはテントの扉を開け、

身体を捻らせて前を見る。

危ない。

「ほんとだほんとだかっ飛ばせ〜」

「ほいさ〜」


『ようこそ!旅人さんですね!こちらへどうぞ!』

2人で待合室に向かう。

「美建築が君を待っている!....ねぇ」

「美建築ですか?テーマパークですかね。」

「いや、法律で自分で家を建てないと行けないらしくて、そんで自分で家を造りあげて、そのなんか、秘めたるなんかを見せつけ合ってがステータス何だってさ」

「へぇ....。」

『旅人さん方どうぞ!良い観光を!』


 待合室から出てすぐに驚いた。

準備はしていたが結局驚いた。

国中が非常にカラフルだったのだ。

色覚だけではなく造形的にも。

赤青黄色、虹のペイントや

キューピットの彫刻。

どの家も店もが色彩と造形で主張を放つ。

「これは凄いですね...!! どの家もなんか、そう....凄いです!!」

「そうねぇ....取り敢えず反射光が眩しっ....」


 とある街角で道路を向かいに

男2人が揉めていた。

『この野郎!俺の美建築を汚しやがって!』

『ふんっ、少しはねただけじゃないか。逆に美しきだろ?』

『何を言ってるんだ!完成仕切ったパーフェクト建築なんだぞ!』

『なぁにを言うのか?パーフェクト建築なんて存在しないンだよ...。進化し続けるこのネオ建築こそが至高...。あっ!』

『はハッ!ざまぁないぜ!何がネオ建築だ!色を足してやったぞ?どうだ喜べ!』

『貴様....!許さン!堕ちろ建築!』

『なッ!こいつッ!』

『至極の美建築とは天才が創るものだ...!』

『このぉッ!暴力的創作は行けないッ!!!コレで...!!!』

『ぐおお─────ッ!!やったな貴様!』

『お前とは何も趣味が合わない人間だ!向かいからいなくなれ──────ッ!!!』

『それは貴様のほうだ!』

『『どりゃああああ──────ッ!!』』

ばしゃっ...。


「ひゃぅっ!?目の前がクリーム色に!?」

「どゆことー」

「そのまんまですよ!」

ドアを開け、ルアは状況を確認する。

綺麗なクリーム色だ...。

「よっ」

シュネーも見てみる。

「うひゃあホントだ!」


ルアは周りを見渡すと...。

2人の男がバケツを持って固まっている。

睨みつけた。

『『ひぃッ!?』』

「........。」

『『あっ....すすすすすす....すみませんお嬢様...』』

「お嬢様じゃないです。」

『『えっ....!?』』

「僕は男ですよ!」

『『あ、失礼』』

「僕の...。どうして....くれるんですか....!」

男達は互いを見合せ....

土下座した。

それは余すことないほど綺麗で美しい

スライディングダイナミック土下座だった。

このままではルアが轢き殺しかねない!

シュネーが割って入る。

「まぁまぁ許してあげなよ、あっそうだ!イメチェンって事でさ!ね、ほら少年!いいね!いいじゃん!ほら土下座君達も綺麗に整えてあげてさ!ほら、立て、早く、GO!」

『『いぇすまむッ!!』』


 筆や色を落とすための具材など

様々な塗装グッズを用いて、

クリーム色に染った自動車は

あっという間にいい感じに纏まった。

翠からクリーム色に大転生を果たし、

フロントからリアにかけて走る

赤いラインが目を引く、

中々に良いデザインとなった。


 車のペイントが乾くまで彼らに預け、

元気付ける為にシュネーはルアを連れて

食事に行った。

『なぁ...あの2人....』

『ああ、分かるとも....黒金の少年と白銀の女性....対比含め見事に美しかった....。』

『モデルにさせて貰いてぇな...』

『帰ってきたら頼んでみよう!』

『そうしよう...まさか貴様と意見が合う日が来るとはな....やはり彼女らは美の女神達だったか....』

『片方はただのボクっ娘にしか見えないから女神達でも良いよな?』

『貴様、ボクっ娘が趣味だったのか』

『なっ、バレちまっ...別にいいじゃねぇか!てか女神達って言い出したのお前じゃねぇか...!』

『ふっ....』

『まさか!お前は俺と....!』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る