働き者の国
たったたたたたたったったっ....。
翠の鋼の馬が
荒野に引かれた道を走っていた。
延々と続く道はそのまま
永遠に続くと思われたが、
やはり終わりは来るものだ。
国の門でその馬は停車した。
「ししょー。着きましたよー準備しといてくださーい。」
後ろに伸びたパイプに話しかける少女...
「むっ。」「どったのー」「いえ、何も。」
少年、ルアはその後ドアを開ける。
「準備はとうに出来とるよーんっと...!」
後ろに荷台に貼られた不自然なテントから
飛び降りた銀の髪にパステルピンクの瞳、
そして猫の様に細い瞳孔を持つ女性。
彼女の名はシュネー
ルアには師匠と呼ばさせている。
『どうもお疲れ様です。ようこそ我が国へ!』
決まり文句から始まり、入国手続きに入る。
『旅人さんですね?....はい!お二人様で。ではこちらの待合室にどうぞ!』
この国から二人で顔を見せとく事にした。
いや、2人です。
って言うのが面倒臭くなるだろうと
ルアは考えたからだ。
因みにシュネーは当初...
「え、やだ、できるだけ歩きたくないもん」
とか言って拒否していたが、
「ご飯抜きますよ。」
とルア脅された為に従っている。
しっかり美味しいルアの手料理を食べては
パサパサで味の無い携帯食料には戻れない。
食の力は偉大である。
さて、入国手続きがなんやかんやで終わり、
無事入国できた。
宿は沢山あったので
最も安いのに泊まってやろうと思ったが、
どうやらシャワーも何もついてないらしい。
二番目に安い宿に泊まる事にした。
こちらにはシャワーがある。
交代で浴びると
いつも通りにプランを練る。
軽く店に寄ってから丘で写真を撮ろう。
という初心者みたいなプランで
今日は寝る事とした。
「ちょっ!電気消さないで!」
「あ、すみません。」
次の日となった。
備え付けの小さなキッチンで軽く
フレンチトーストの様なものを作る。
はんぺん状になった食パンを
2人で食べると、街に出た。
が、活気がない。
「なんだか静かですね。」
「そうだなぁ...」
「まぁ行きましょうか。」
店も閉まっており、
公園の噴水も止まっている。
と、ベンチで寝ている
中年のヒトを見つけた。
どういう事か聞きたいとこだが
起こすのはかなり気が引ける。
「どうしましょう....。」
「プラン通り、山に登って写真を撮りに行こう。戻ってくる頃には何か変化があるかもしれない。」
「そうですね。」
という訳で山に登った。
カメラを取り出し、
ケション!っと乾いた空気に乾いた音を立て
シャッターを切る。
良さげだ。
「師匠...! こっち終わりですけど」
「ほーい、帰ってみるか!」
下山する。
しかしそこにあったのは朝と同じ、
活気の無い街の姿だった。
「これは一体どういうことだい?」
「僕に聞かれても知りませんよ....朝ベンチで寝てたヒトはどうなったんでしょうか....?」
「確かにな」
公園に向かうと...。
やはりまだベンチで横になっている。
近づいてみると....。
『旅人さん、不思議だと思っているね?』
反応を示した。
「そうですねぇ、何事かと」
シュネーが進んで聞き返す。
『別に何か事件が起きた訳でも、この国の住民が怠け者な訳でもない。後者に関してはこの国は周りの国より勤勉で働き者が揃っている国だと思っているよ』
「ではどうしてです?」
追加での注文。
『今日は面倒臭がりの日なんだ。』
「へぇ、国王か誰かが決めたのです?」
『そうだ私が決めた。』
「えっ」
ルアが思わず驚く。
『まぁ、私が面倒臭がりなんだ。国王になったら何もせんくても良いと思ってた。だが現実は当然違う。次第に私も染まって行った。毎日毎日、休み無く働き続ける。今ではもう慣れたもんだよ。でも、周りのものが労働を続けている様を見て、ある日思ったんだ。これでいいのかって。だから月に一日だけその日は全力で休む。という簡単なルールを作ったんだ。』
「実際のところどうなんです?」
中年の男、その国王は笑って、
『明日が辛いよ』
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