馬鹿らしく: 普通な国

「右....下..........右........上......。」

一本の木がある草原の中で

格闘ゲームのコマンド入力のような

単語が響いている。

「........上.....上.....下......下........左...

右...左..右.........文字...?えっとB.....A....!!」

格闘ゲームでは無いかもしれない

「お見事!」

「なんなんですかこれ。」

「あれ師匠言ってなかった?」

「師匠言ってないです。」

「視力検査だよ、少年はどれだけの視力があるかどうか」

「なんで今なんです?」

「気になってたから....」

「さいですか。」

さて、師匠ことシュネーは木に貼った

即席の視力検査シートを剥がして、

戻って来る。

「2.0だね両目とも」

「凄いんですか?」

「まぁ、大切にしな」

「はーい。」

小人のような四輪自動車型古代異装

に一行が乗り込んだあとに

ルアは地図を開く。

近辺の国までのかなり簡略な地図を、

前に行った国の住民に描いてもらった。

「あの山の麓に国がありそうです。」

「よし、飛ばしてこ〜」

「ほいさー。」

どるっ!たったったたたたたたた...

安定した加速で軽やかに

山まで走り出した。


国に着く頃には

もう辺りは真っ暗になっていた。


『ようこそ。旅人さんですね?』

「二人です。僕と荷台に」

「こんばんは」

『分かりました。では待合室へどうぞ』

国の概要の本を手に取り読み始める。

「いい意味で普通の国ですね」

「そうねぇ...。補給して出るか」

「そうしましょう。」

扉が開き、

『どうぞ、良い観光を』

宿は指定のもので

どうやらサービス付きだ。

嬉しい

肝心の部屋は普通だったが、

朝晩に食事が付き、

大浴場もロハ(無料の意)で入れる。

「折角ですし大浴場行きましょう。」

「あら、お風呂のお誘いですノ?」

「残念ながら混浴ではございません」


温泉には露天風呂があり、

闇に浮かぶ灯火が目に映る。

他に誰も居ない地から湧く泉も

星々の元で煌めく。

ちゃぷ....。ざぁあ....。ちゃっぷ.....。

「ふあぁあ.....。」

シャワーばかりで終わらせていたが

湯に浸かるのも悪くない。

家を捨ててから初めての温泉、

芯に熱が伝わろうとするのが分かる。

しん、とした露天を裂く様に...

「おーいい!しょうねぇ〜ん!」

木で隔たれた壁の向こうから声が聞こえる。

「ちょ、そんな大声...、恥ずかしいですよ!!」

「どうせ誰もいないんでしょー」

改めて周りを見渡せば確かに誰もいない。

「で、ですけど」

「偶にはバカになりなよ、疲れきったら直ぐに時が終わるぞ〜」

ルアは1.3秒潜水して

「まぁ、そうですね...! 」

「しりとりしようか!」

「はいっ!」

「しりとり....り.....リップです。」

「ぷ....ぷ?....プリン....。」

「えっ....。」

「プリン......ト!」

「プリント....?........。ええと....トリオです。」

「お............

そんな感じで逆上せかけそうで、

露天による涼しさで逆上せないで

を繰り返して.......。

なんだかんだ楽しかった温泉

から揚がり、今日は寝てしまった。

(なんか忘れて....。あ、プランニング....。でも寝たい.....。くそぉ)

思いついてしまったらやって

置きたい性分故に、

結局考える事にした。

そして気付いた。

「補給して出るって言ってたな...」

馬鹿らしい時間を過ごし、

笑いたくなったが、

寝ている人が居るので我慢した。

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