虫チェイス

 ぶぅぅぃぃぃぃぃぅぅ!!!!!!

たたたたたたったたったたた!!

とてつもなくデカい羽音。

若干負けているエンジン音。

いや、負けてる。

荷台のテントがこれ程かと言う程に

ばたたたた.....!

たなびいてばたたたぶぅぅぅぅぅん...

時速110kmでのカーチェイス(仮)!

その1人乗りの

四輪自動車型古代異装の運転手は、

「ししょー、いつまで走れば....!?」

前から目を離さず何処かに

話しかけるその少女...

「むっ」「どーしたしょーねーん」

「なんでもー」

その少年、ルアは、

5mくらいある

トンボに追われていたのだった!

「まぁこの子が飽きるぐらいに走ってあげなさーい。今日だけサービスよーん」

「うっ....。」

実の所追われる理由は分からない。

餌だと思ったのだろうか

二回り小さい種類だともっと速いが

今回のは最大種である、

デカすぎて逆に

遅くなってしまったのだろうか?

にしても110km/hで

追従してくる虫なんてかなり、

「きゃあ、やっぱきぃもちわりぃ〜⤴︎︎」

幌、テントの入口を捲って

銀の髪が慣性の法則に従って、

暴れず綺麗に垂れ落ちる女が顔を出す。

出してから暴れ出した。

何故か楽しげだ。

「もっとスピード出ないのー?」

「出そうには出せますけど...。燃料持ちませんよ?」

「あぁ〜」

「撃退できる道具無いんですか?」

「じゃあビームを....」

「えっ...!?そんな事が?」

「冗談冗談!すみませーん!あっ、少年!魔法書あるか?破って使う奴!」

「2類ですか?鞄こっちなんですけど」


 魔法書物、其れは魔法協会出版の

書物で壱から参類に分類されている。

第壱類書物: 魔法動力源内包で

記載の手順を取ることで

任意の魔法を再現する。

魔力消費を本が肩代わりしてくれる。

第弐類書物: 魔法動力源内包で

破って使用する使い捨ての物。

手順は魔法書単体で完結する為、

魔法を使うだけなら手軽である。

第参類書物: 魔法動力源は備わって

無い、所謂魔法の教科書

のようなもので、使用者次第で

高いポテンシャルを持つ。


関係無いが次いでに特類魔法書物についても

話しておこう....


特類書物: 書物に魔獣等が

封印されている、もしくは

書物自体に意思がある、等の

かなり危険な代物。

未だ発見例は出ておらず、

古代資料の物語にのみ、

存在が認められている。

もし発見してしまった場合、

直ちに魔法協会に相談する事が

推奨されている。


話を戻そう。


「鞄そっちなのか...。やむを得ん!」

何をするのか?そう思考した。

「特攻しますっ!」

「却下です。」

師匠がいくら身体が丈夫とは言え、

流石に持たないだろう。

「えぇ〜...」

「何を期待してるんですか!?」

とりあえず...。

「捕まってて下さいよ!!」

ステアを一気に切り、

サイドブレーキを引き上げる!

がっっかああっ!

はねとびそうな勢いでターンし、

シフトをリバースに入れる。

スピードをできるだけ落とさず、

バック走を開始、

タイヤを少し外に出しているとは言え、

軽さや、車高的に

派手に横転しそうなものだが、

小人のようなその車は主に応える。

窓を開けると左手で鞄から

1枚、破れた紙を出し....。

それを窓から放すと、

一気に燃え始めたのだ。

痛覚が無いと言われる蟲だが、

炎の熱を受け反射的に

逃避行動を始める。

そのまま明後日の方角へ飛び出すが、

羽が燃え落ち、

大地に叩きつけられた。

100km/hでバック走をしていた車は

ゆっくり減速して止まった。

「.....し、師匠?大丈夫ですか?」

「多分大丈夫!で、トンボは?」

「燃やしました。」

「おー怖」

「さて、師匠?」

しょうがないねと

シュネーは両手をあげ、

退けて見せた。

メーターにはガス欠の表記。

次の国までその中途半端な重量を

2人で押して行った....。

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