亜ぐ刻旅日:覇

のつなよ.exe

再起の国

 だたたたたったたたたた....

荒地に1本舗装された道を、

四輪原動型の古代異装がゆったり走る。

カラーリングは綺麗な翠色

丸目二灯で運転席の両隣にドアがある。

つまり1人乗り....

すると、

「ししょー...この先に国あるんですかね...。」

窮屈なはずの運転席にゆとりを持つほど

華奢な少女....

「むっ」

では無く少年が

何処どこかに語りかける。

「うーん、わかりゃんセ」

とちょうど後ろの窓に刺さったパイプから、

ザラのない透った声が返ってくる。

「師匠ってば....。」

「だが道があるってことは何かに通じているのは間違いないねぇ!全速...前進っ!」

「ほいさー。」

たたたたたたったたたたっった....。

独特なエンジン音を周辺に撒き散らし

ゆったり最速で進んで行く。


 会話から20マイル程進んだところで

城門に到着した。

なんて無駄な会話だったのか!

さて、到着早々に入国手続きにかかる。

『ようこそ我が国へ、旅人さんですかね?』

「そうです。僕と荷台に一人。」

『荷台...!?、はい。では二人共にここにサインを』

サインを書いてそのまま入国。

観光より大切な事、宿探しをクリアしに行く。

宿は割と直ぐ見つかった。

なんて無駄な地の文!

シャワーを交代で入り、

先に済ましたルアはプランを練る。

「街並み歩きながら、国についてそこら辺の人に聞いて、補給ってとこかな....。」

二階建てのシンプルな木造の宿、

木の香りが落ち着く。

壁は石膏で塗りたくられているが、

木と石膏の色合いはやはりベストだ。

床は畳が敷かれている。

どう作ってるんだろうとか考えていると...

がらっ...

横開きの扉が開く。

「うい〜決まったかな?」

「まぁとてもざっくりと。」

今日はご飯を買いに出かけ、

日が沈むと同時に宿へ戻って休んだ。


 日が昇る。

朝ご飯を食べ、観光を始める。

全体的に建物は低く、山に小さい城がある。

どうやら城は観光地で

この国の政治には関係無いらしい

今日はそこへ登ってみる事とした。

が、道を間違えたようだ。

反対側に着いてしまった。

「あれ?少年!こっち違うぞ」

「途中の分かれは右だったみたいですね...。」

ここまできて戻るのはなんだか悔しいので、

登り切る事にした。

明日行けばいい。

さて、緩い山道を歩いて行くと

急に木々が開け、森々とした大地が目に映る。

ルアはカメラバッグから射影機型古代異装を

取り出し、ストラップを首にかけると、

右手側に集約したボタン類を軽く操作する。

ファインダーを覗くと....

「ありゃ」

真っ暗だった。

レンズにはカバーが着いたままだった。

外してもう一度覗く。

プリズムから反射された景色を基準に

ピントを合わせ....。

しゃっこん!...シャッターを切る。

その後下の画面に現れた写真を確認すると、

出した時の状態に戻してバッグに仕舞う。

振り返ると師匠が何か見ている。

「何見てるんです?」

「石碑だね、それも沢山。」

絶景に気を取られていて気づかなかったが、

十つの石碑が建てられている。

十つの内九つは同じ文言が書かれている。

「奪回ノ石碑....ですか。この人、城をられては奪い返して、られては奪い返してって...弱いんだか強いんだか...」

「なんやかんやあってもそれだけ人気だったんじゃないの?」

「そうなんでしょうね....。」

十個目はお墓だった。

名前は崩れて読めない、

そしてカラカラに乾き

半分、炭の様になっている花だったものが

日焼けで黄ばんだ白い陶器に刺してある。

とうの昔に忘れ去られて苔むしたお墓。

だが、それでいいのだろう。

二人はその墓に手を合わせ、

挨拶をすると、

下山した。


 翌日は城の方に行った。

屋台が出ており、さながら何かのお祭りの様。

フルーツ飴とか

軟体動物をこんがり焼いたモノ...。

財布がすっからかんにならない程に

食べ歩きながら城を周る。

「ひゃー絶景だなあ!しょうねーん、シャメ撮らないのー?」

「もう十分撮りましたよ昨日。」


 帰りに補給を行い、

日が昇ると同時に城門を出た。










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