【第19話】スープをドクドクと

敵の目を麻痺させたところまではいいが、魔法をかけた本人も目が見えなくなっている!


「それじゃ意味ないでしょポコタン! そうだ、ミルキーさんは!?」


「私も見えません」


「みんな目が見えないんじゃ、どうしようもないじゃないですか!」


ズキューン!


「わっ、あぶないポコ!」


「で、僕たちの目はいつ回復するんですか?」


「前にこの技を使ったときは、2~3分で回復したポコ」


「そんなにかかるんですか!?」


そのとき、ミルキーが呪文を詠唱した。


「メガヒーーーール!」


すると、あっというまに目が見えるようになった。


「見えたポコ!」


「そうでした! ミルキーさんの回復魔法を忘れてました!」


「お役に立てて何よりです」


ドキューン!


相変わらず、ドクター・モディファイだけは目が麻痺したままのようだ。


僕は彼女に歩み寄って、ラッパ銃を取りあげた。


「あっ、こら! 返せ! 私の目に何をしたのだ!?」


「ちょっとした攻撃魔法です」


「くそっ、殺すなら殺せ!」


「殺したりはしませんから、安心してください。それよりも魔王の居所を教えてください。僕の幼なじみが魔王に捕まっているのです」


「私の知ったことか!」


「強情ですね。しかたがありません」」


「どうする気だ!?」


「こうします」


僕は懐から水筒を取り出し、叫んでいる彼女の口の中に液体を注ぎ入れた。


「うっぷ!? 何を飲ませた!? ──って、うま! なにこれ!? おいしい!」


「もっと飲みますか?」


「頼む」


目の見えないドクター・モディファイの口に、ラーメンのスープをドクドクと注ぎ入れる。


「ふーっ。もう一杯! ……ああ、目が見えてきた」


「もっとほしいですか?」


「ほしい! その水筒に入っているのは、いったい何なのだ!?」


「ラーメンのスープです。お作りしましょうか?」


「ラーメン……だと?」


「このスープの中にメンを入れた食べものです。シコシコの歯ごたえのメンにスープがからむと、それはもう絶品の味」


「よし、作ってくれ! 食堂の厨房を使え。カネなら、いくらでも払うぞ!」


「お金はいりません。魔王の居場所を教えてください」


「魔王さまの居場所か……。実は、私も知らないのだ」


「ええっ!?」


「しらを切るとラーメンあげないポコ!」


「本当だ! 信じてくれ!」


この期に及んでウソをつくとも思えない。

どうやら本当に知らないようだ。


「何か、手がかりだけでも知りませんか?」


「魔王さまの手がかりか……。もしかしたら、転生屋のリンカなら知っているかも」


「転生屋のリンカ? その人はどこに?」


「ベルカイ村だ」」


「行ってみるしかなさそうですね」


「もういいだろう? お願いだからラーメンを作ってくれ」


   *


食堂の厨房に移動し、僕は究極のインスパイア系ラーメンを作った。


「はい、ドクター・モディファイ。お待ちどうさまです!」


「これがラーメンか!」


「……と、その前に、もう1つお願いが」


「何だ?」


「もう新型カーゼは終わったから、マスクはしなくていいし、予防薬も不要だというおふれを出してください」


「く……。しかたがないな」


では、どうぞ……といおうとしたとき、ポコタンが口をはさんできた。


「その前に、3つ目のお願いがあるポコ」


「何だ?」


すると、ポコタンはドクター・モディファイに耳打ちをした。


「ちょっとポコと一緒に厨房に……」


「ポコタン! 聞こえてますよ!」


「しゅん……」

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