【第18話】美少女ドクター VS ポコタン

見た感じでは、11~12歳ぐらいだろうか。


どうにもイメージとかけ離れすぎているので、僕は少女にたずねた。


「あなたが院長さんのドクター・モディファイですか?」


「そうだが、おまえたちは誰だ?」


「僕はジーロ。こちらがミルキーさんで、こっちが……」


「ポコタンポコ! ポコタンはあなたと結婚するポコ!」


「はあ……? 私はタヌキとたわむれる趣味はない」


「しゅん……。ポコはタヌキじゃないポコ」


「ポコタン、話がややこしくなるので少しだまっててください。ドクター・モディファイ、実はあなたにお願いしたいことが2つあるのです」


「お願いだと?」


「1つは、魔王の居所を教えてほしいのです」


僕の言葉を聞くと、ドクター・モディファイの表情が険しくなった。


「……ほう。なぜ私が魔王さまの居所を知っていると思うのだ?」


「ゲロフレアさんに聞きました。おそらくあなたなら知っているだろうと」


「なにっ!? ゲロフレアがそんなことを!? おまえは何者なのだ!? 見た目は人間のようだが、魔族と契約した者か?」


「いいえ、私はただの人間です。その口ぶり……そして魔王を『魔王さま』と呼ぶということは、あなたは魔族と契約を交わされたのですね」


「ちっ……私としたことが、口がすべっちまったな。いかにも私は、高い知能と医学的知識を魔王さまに買われ、魔族と契約した人間だ。だが、知られたからには生かして帰すわけにはいかないな。衛兵! 衛兵! ……んっ!? どうした衛兵!?」


「いくら呼んでも衛兵さんは来ませんよ。たぶん今、それどころじゃないと思いますので」


「キサマ……弱そうな人間に見えるが、ゲロフレアの口を割らせ、腕利きの衛兵も倒したところを見ると、ただ者じゃないな!?」


ドクター・モディファイは机の引き出しから素早くラッパ銃を取り出し、銃口をこちらに向けた。

どうやら魔族と契約を交わしてはいるものの、魔力を使えるわけではないらしい。


「それほどの者じゃありません。あなたが魔族であることは口外しませんから、その拳銃を下げてください」


「信用できるか!」


「やはり魔王の差し金で、実際には存在しない新型カーゼという病気をでっち上げたことを知られたくないんですね? おそらく予防薬にはカーゼのウイルスを仕込んであって、マスクや治療費で儲ける算段だったのでしょう」


「なんだと!? なぜそこまで知っている!?」


「ただの推理ですよ。お金のために、そこまでするなんて、魔王も見下げ果てたものです」


「はっはっはっ。カネだけのためじゃない。継続的に予防薬を飲ませることで、村人は身も心も徐々に弱っていく。死なない程度に弱らせれば、支配しやすい。いずれ予防薬を世界中に配って、魔王さまが支配しやすい世の中にするのが狙いだ」


「なんて酷いことを!」


「うるさい! どうせおまえは死ぬんだ!」


ドクター・モディファイが引き金に力を入れる。


「ポコタン! 彼女を傷つけないで、この場を切り抜ける攻撃魔法を!」


「無茶いうなポコ!」


ポコタンの攻撃魔法はランダムだ。


やってみないと、どんな攻撃が出るかわからない魔法の不便さを、今ほど思い知ったことはない。


同行してもらったミルキーは回復魔法専門だから、この場では役に立たない。


「ポコタン、こうなったら、一か八かです! 相手を傷つけないように手加減して攻撃をお願いします!」


「手加減とか無理! ポコーーーーーーーッ!」


ポコタンが叫ぶと同時に、その体がオーラを放った。


ビカッ!!!

……うっ、まぶしい!?


あまりのまぶしさに視界が真っ白になってしまった。


「なっ……何も見えません! ポコタン、何をしたんですか!?」


「これは……光属性の魔法ポコ!」


「光ですって!? その効果は!?」


「しばらく相手の目を麻痺させて、見えなくするポコ!」


「それだけ!?」


「くそっ、目が! 目が! 私としたことが、こんな動物にしてやられるとは!」


ドキューン!


ドクター・モディファイも目が麻痺してしまったようで、やみくもに銃弾を発射した。


ラッパ銃は散弾銃だから、どこに飛んでくるかわからない。


とりあえず、次の弾を込めるまで、しばらく時間がかかるはずだ。


「みんな、伏せてください! 確かに敵にも効いたようですが、私の目も見えなくなってます!」


「ポコも見えないポコ」

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