【第13話】ゲロフレア陥落

ゲロフレアの目は、もはや焦点が合っていない。


「早く! あの料理を早く持ってきてくれ!」


「あげてもいいですが、条件があります」


「おう、なんでもやるぞ。裸踊りでもやろうか?」


「いえ、そういうのは大丈夫です。私の幼なじみ、マドロラという少女が魔王にさらわれたのです。魔王の居所を教えてもらえますか」


「……知らん」


「ゲロフレアさん。あなたはラーメンがほしくないんですか?」


「本当に知らんのだ。魔王さまの棲み家は、われわれ家臣にも知らされていない。……いや、待てよ。おそらく、あいつなら知っているだろう」


「それは誰ですか?」


「俺よりもはるかに前から魔王さまに仕えている古株だ。名前はドクター・モディファイ」


「そのドクター・モディファイさんはどこにいるんですか?」


「パント村のモディファイ病院にいる」


「モディファイさんというのは、お医者さんなのですね」


「そうだ」


魔王の手下が、まさかの医師。

敵ながら「隠れみの」としては秀逸だ。


「ポコタン、すぐにパント村へ向かいましょう」


「ポコ!」


「おい、ちょっと待てい! 約束のラーメンはどうなるのだ!?」


「そういわれても、魔王の居所を知らないのでは、話になりません」


「ドクター・モディファイのことを教えてやったろうが! 頼むよ! お願いだから!」


「しかたがありませんねえ……。じゃあ、こうしましょう」


「なんだ?」


「この屋敷にとらわれている、すべての人を解放してください」


「なにっ!? ……く、くそう、足元を見おって……。だが……待てよ。衛兵はまた捕まえて増やせばいいか」


「いや、それはナシで」


「なにっ!?」


「もう女の人を捕まえて屋敷に囲うのはダメです」


「永遠に?」


「永遠に」


「それは無茶な相談だ! 俺は美女が大好きなのだ! 美女がいない人生なんて!」


「じゃあ、ラーメンはいらないのですね」


「いる! いるよ! わかった! もう二度と悪いことはしない。これでいいか?」


「わかりました。では、おかわりを作ってきますので、その間に衛兵さんや懲罰房にいる人を解放してあげてください」」


「わかった……。しかし勇者よ、おまえが魔王さまに殺されたら、俺は二度とあの料理を食べられないのか?」


「そうですね。首尾よくマドロラを救出できることを祈っていてください。そしたら、地元でラーメン専門店を作るつもりですから、ぜひ食べに来てください」


「もちろん行くとも! なんという店だ?」


「そうですね……。『ラーメン・ジーロ』とでもしましょうか。


   *


僕がラーメンを作っていると、厨房に大勢の女性が押しかけてきた。

1、2、3……全部で60人ぐらいはいるようだ。


そこに、たくさんの鍵をジャラジャラとぶら下げたゲロフレアが戻ってきた。


「これでいいか?」


「ありがとうございます。では、おかわりをどうぞ」


「待ってました! ズルズルズル……。うっま! うっま!」


女性の衛兵たちは、僕を見つけるなり、黄色い声を上げた。


「キャッ! あなたが私たちを解放してくださった勇者さまですか?」

「何かお礼をさせてください!」

「どんなゴツい勇者さまかと思いきや、なんという、かわいらしいお姿!」

「一生、あなたさまにお仕えします!」

「どうか私を勇者パーティーに加えてください!」

「私も!」

「私も!」


「困りましたね……。ポコタン、どうしましょう? みんな女性とはいえ、これだけの人数で魔王のところへ向かえば、さすがの魔王も……。あれ? ……ポコタン?」


テンション上がりまくりのポコタンは、僕の話なんか聞いちゃいなかった。

早くも女性たちを物色し始めている。


「ど・の・子・に・し・よ・う・か・な~♪ ポコタン迷っちゃう!」


「まあ、人間の言葉が話せるなんて、なんてお利口な子でしょう」


「ジーロの勇者パーティーに入るには、条件があるポコ! この中で、一番おっぱいの形がきれいな子が勇者になれるポコ! 名づけて『勇者選抜おっぱい大会』を開催するポコ!」

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