【第10話】女だらけの衛兵たち

僕とポコタンは、闇夜にまぎれてゲロフレアの屋敷に近づいた。


「ポコ!? 正門のまわりに見張りがたくさんいるポコ!」


「すごい数の衛兵ですね。全部で……11人もいます」


「こりゃーこっそり潜入するのは無理ポコ……んん?」


「どうしました、ポコタン?」


「衛兵がみんな女の子ポコ!」


「そんなわけないじゃないですか。いくらポコタンでも、その妄想はひどすぎますよ。大丈夫ですか?」


「本当ポコ! よく見るポコ!」


「えっ……た、確かに。よく見ると、みんな女性ですね。いったいなぜ!?」


「女の衛兵なら、戦ってもサクッと勝てそうポコ」


「いや……ポコタン。案外それは難しいかも」


「なんでポコ?」


「女性とはいっても、みんなただ者ではなさそうです。手足の筋肉をよくみると、全員かなり鍛え上げられています。

それぞれ剣や魔法の杖など、持っている武器はさまざまですが、その道のプロのようですよ」


「う……本当ポコ。みんな歩き方からして、さっそうとしてるポコ。ヤバすぎポコ。でも、強い女子もけっこう好きポコ」


「いや、ポコタンの好みはどうでもいいです。ひとまず裏門にまわってみましょう」


   *


「裏門にも女の衛兵が4人いるポコ……」


「でも、突破するなら、こっちのほうがラクそうですね。しかし、戦って騒ぎを起こしてしまうと、応援がたくさん来てしまいそうです」


「じゃあ、どうするポコ?」


「いきなり『お嬢さんたち、ラーメンはいかがですか?』というのも、変ですしねえ」


「怪しすぎるポコ!」


「こうなったらポコタン、衛兵を引きつけてください。そのすきに僕が潜入します」


「オトリなんて危険すぎるポコ! 殺されたらどうするポコ!」


「ポコタンの可愛さなら、きっと大丈夫。もしかしたら衛兵たちが抱っこしてくれるかも」


「ポコ?」


「ほら、衛兵たちの鍛え抜かれたプロポーションを、よくご覧なさい」


「おおお……。スリムマッチョなボディに、大きなおっぱいの子や、小さなおっぱいの子。そして、ぜい肉のついていない小さなお尻も、ポコの好みポコ」


「そうでしょう、そうでしょう。ポコタンみたいにモコモコで可愛らしい小動物を見つけたら、彼女たちはどうするでしょうか?」


「きっと、抱っこしてくれるポコ! おっぱい触り放題ポコ!」


「わかったら、オトリ役をよろしくお願いいたします」


「がってんポコ!」


単純な小魔獣でよかった。

ポコタンは裏門を見張っている4人の衛兵に、そっと近づいた。


「あら……? 子どものタヌキかしら?」

「ちょっと違うみたい」

「小魔獣の一種かしらね」

「毛がモフモフしてて可愛いわね」


「クーン……ポコ」


「「「「かっわいーい!」」」」


ポコタンはタタタと走って、さりげなく衛兵たちを裏門から離れるように誘い出す。

うまいぞポコタン!


「「「「待って!」」」」


よし、ねらいどおり、裏門がフリーになった!

僕はすかさず裏門をくぐり、屋敷の敷地内に潜入した。


だが、屋敷の玄関の前には、またしても数人の衛兵が。

しかも、また全員が女性だ。

この屋敷、いったいどうなってるんだ……?


そこにポコタンが走ってきた。


「ポコタン! 無事でしたか!」


「ポコタン満足ポコ! 特に一番巨乳の子の──」


「そういう話はいいですから、屋敷に入る方法を一緒に考えてください」


「それなら、地下室の通用口を使うといいポコ」


「通用口?」


「さっきの衛兵たちが話してたポコ。衛兵の控え室は地下にあって、みんなは秘密の通用口を使って出入りすることが多いらしいポコ」


「ポコタン、お手柄です! その通用口はどこに?」


「あの木の根元にある、マンホールを開けるポコ」


マンホールを開けると、階段があった。

僕たちは階段を下りて地下室に向かった。


階段を下りきると通路があり、その先にある部屋から女性の話し声が聞こえてきた。


「この感じだと、控え室にはかなりの数の衛兵がいるみたいですね。見つかったら、ただじゃ済まなそうです」


「あっ、1階に上がる階段が見えたポコ。衛兵の話では、ゲロフレアは今、1階の広間で女の子のお尻をなでながらお酒を飲んでるらしいポコ」


「そこまで聞き出すとは、ポコタンを見直しました」


「ポコタンもお尻をなでるポコ!」


「やめてください。では、控え室の衛兵に見つからないように1階へ向かいましょう」


そのときだった。


「おい、誰だ、おまえら!?」


「ポコ!? 見つかったポコ!」


しまった!

振り向くと、そこには1人の衛兵がいた。


やっぱり女性。

しかも、やけに肌の露出が多い衛兵だ。


「あれ……? もしかして、エロイザさん?」

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