【第9話】エチシタイン島

なんとかナディを説得することに成功。

僕たちは漁船の上にいた。


インスパイア系ラーメンの効果について説明すると、ミルキーはとても驚いた。


「そんな不思議な料理があるなんて、とても信じられません」


「僕も最初はびっくりしたけど、あのナディを見れば納得でしょう」


ナディは謎の歌を口ずさみながら舵を握っていた。


「フンフン♪ ラーメン最高~♪ ラーメンのために~♪ あたしは生きる~♪ ウフッフ~ン♪」


「……確かに」


「おいジーロ君! 本当にエチシタイン島に着いたら食わせてくれるんだろうな、あの料理?」


「もちろんです。でも、今は操縦に集中してください。なにしろ夜ですから」


「任せんしゃい。この海はあたしの家みたいなもんら。真っ暗だってなんのそのら! ラーメンラーメンラーメン~っと♪」


   *


かなり蛇行しながらではあったが、無事にエチシタイン島に到着。

漁船を桟橋につける。


「着いた着いた~♪ ジーロ君、約束通りラーメンを食わせろ!」


ナディのろれつが回ってきた。

禁断症状が少しやわらいだようだ。


「はい。ただ、ラーメンを作るには火が必要です」


「じゃあ、すぐに火を起こせ」


「ゲロフレアの敷地内で火なんか起こしたら、殺されてしまいますよ」


「じゃあ、どうすんだよ!」


「ほら、あれがゲロフレアの屋敷のようです。あそこで厨房を借りましょう」


「おまえはバカか! 見つかったら殺されるっていったのは、おまえだろ!」


「ですから、まずはゲロフレアを倒します。それから厨房をお借りしましょう」


「魔王の手下を倒す!? そんなことができるわけねーだろ!」


「実は、かくかくしかじかで、僕たちの勇者パーティーは、ゲロフレアをあと一歩のところまで追いつめたことがあるのです」


「なんだと!? おまえ戦士だったのか! しかし、そのエロ魔獣にそんな力があるとは意外だな」


すると、ポコタンが胸を張った。


「ポコタンの戦いぶりを見たら、きっとナディも惚れ直すポコ!」


「アホか。惚れてもいないのに、惚れ直すってなんだよ」


「しゅん……」


ゲロフレアの屋敷は、金貸しのダイカーンの屋敷よりも、さらにひと回り大きい。

おそらく、中にはたくさんの手下がいるのだろう。


「騒ぎを起こすとやっかいです。目立たないように、屋敷には僕とポコタンだけで潜入しましょう。ミルキーさんは船でナディさんを守ってあげてください」


「わかりました。お気をつけて」


僕たちはポコタンを抱いて屋敷に向かった。


「しかし、ゲロフレアには顔を知られてしまっていますから、やりにくいですね」


「大丈夫ポコ。顔はバレてるけど、手の内は知られてないポコ。前回はポコが攻撃する前に逃げられちゃったポコ」


「ポコタンがエロイザのお尻をペロペロしている間にね」


「それはいわない約束ポコ」


「そんな約束してません。──とかいってる間に、屋敷です」


「じゃあ、さっさと乗り込んで魔王の居どころを白状させるポコ!」


「さすがに、それは危険すぎますよ。どんな罠がしかけてあるか、わかりません。ポコタン、ちょっと中のようすを偵察してきてください」


「どうしてポコ! ジャンケンで決めるポコ!」


「いや、ポコタンは体が小さいから偵察に向いてると思って」


「そんなこといって、本当は恐いからポコ!」


「そ、そんなことありません!」


「じゃあ、一緒に行くポコ!」


「仕方がありませんね……」


結局、2人で乗り込むことになってしまった。


見つかりませんように。

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