【第4話】マドロラを救え!

さすがの僕も、これにはポコタンの頭をポコッと叩いてやった。


「もう! ポコタンはあっちに行っててください!」


珍しく僕が怒鳴ったので驚いたのか、ポコタンは走って逃げていった。


「まさか、エッチなんてしてないわ! すんでのところで逃げてきたの。でも、あいつと結婚しないと、パパとママがどんな目にあわされるか……」


ダイカーンは、この村では悪名高い「金貸し」だ。

貧乏な村人にお金を貸して、高い利子をつけて儲けている。


「でも、マドロラ。ダイカーンって、もう結婚してなかったですか?


「奥さんは50人以上いるって」


「ごっ……な、なんてやつだ! 僕がマドロラを守ります。ダイカーンと交渉してきます」


「危ないわ! ダイカーンに殺されるわ!」


「大丈夫。マドロラも知ってるでしょう? 僕にはポコタンがいます。ポコタン! ……あれ? ポコタン!」


返事をしないので、居間に行ってみるとポコタンがいた。


「なんだ、いるんじゃないですか。返事ぐらいしてくださいよ。マドロラが大変なことに……ん?」


「ぐへへ……。ウマウマ。あの料理を、あれをもっとくれポコ~」


見れば、ラーメンの器が空っぽである。


「ポコタン、あれを全部食べちゃったんですか! おいしかったですか?」


「うまい! もっとくれポコ! もっと!」


「よっぽどおいしかったんですね。スープは少し残ってますが、あいにくメンを1人分しか作ってないんですよ」


「ポコ!? スープだけじゃダメポコ! あの太いメンとスープが絡んで、絶妙な味わいになるポコ! メンを作るポコ! 今すぐに!」


「今度また作ってあげますから。今はそれどころじゃないんです。マドロラが……」


「今すぐ作るポコ! なんでも! あの料理をくれるなら、ポコはなんでもするポコ!」


「そんなことをいわれても……。困ったな。じゃあ、こうしましょう。これから一緒にダイカーンと話し合いにいきます。話し合いがうまくいったら、あの料理を作ってあげますから」


「わかったポコ! 今すぐ行くポコ!」


なんだかポコタンのようすがおかしい気がするが、今はダイカーンに会うのが先決だ。


「マドロラは僕の家にいるといい。じゃあ、行ってきます!」


僕とポコタンは、村の中心部にあるダイカーンの屋敷に向かった。


   *


屋敷というより、もはや巨城だ。

よっぽど金貸しで儲けているらしい。


大きな門の前まで来ると、鎧を身につけた衛兵が近づいてきた。


「おいキサマ! ダイカーン様の屋敷に何の用だ?」


「ダイカーンさんにお話があるんです。マドロラのことで」


衛兵は僕とポコタンのことをジロジロと見て、いった。


「ここはおまえのような庶民の来る場所ではない。帰れ」


「帰れません。力ずくでも中に入ります」


「なんだとォ? おまえ死にたいのか?」


衛兵はすらりと剣を抜いた。


「問答無用というわけですか。だったら仕方がありませんね。ちょっと気絶しててもらいましょうか。ポコタン、みねうち!」


ポコタンの攻撃魔法は強力である。


どんな魔法が出るか、ランダムなのが玉にキズだが、よほどの強者でない限りは一撃で倒してしまうほどの威力がある、すごい攻撃ばかりだ。


この衛兵をちょっと気絶させるぐらい、ポコタンにとっては朝メシ前だろう。


……あれ? ポコタンが攻撃しない。

何をやってるんだ?


ポコタンは何かひとり言をつぶやいていた。


「いんすぱいあ~♪ らーめん~♪ うふっふっふ~♪」


症状が悪化している!


「ポコタン! ポコタン! しっかりしてください!」


「うふっふ~♪」


ダメだこりゃ!

ポコタンが使いものにならない!

となると……。


「降参します」


僕たちは衛兵に捕らえられてしまった。

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