第46話 閑話

お父さん、今頃頑張ってるかなー。


ミレーユさんに編み物を教えてもらいながら、そんなことを考えます。


「ねえ、ミレーユさん」


「何かしら?」


ミレーユさん自身も編み物をしながら、私の問いに答えてくれる。

人族の人って怖いイメージだったけど……狭い世界に居たんだなって思います。


「お父さん、受かるかな?」


「ふふ、問題ないでしょうね。ソーマさんの実力と人柄なら」


「実力はなんとなくわかるんですけど、受かるのに人柄がいるんですか?」


「ええ、そうよ。ランクが上になるとお偉い人からの依頼とか、護衛なんかもあるから。人柄がいいと依頼主も安心するし、依頼を頼むギルドも安心だから」


「そうなんですね! じゃあ、お父さんなら安心です!」


お父さん、優しいもん!

見ず知らずのわたしを引き取ってくれたし、クレアさん達にも優しい。

散歩してると、都市の人にお父さんのことを褒められたりするし。

これも、お父さんがしっかり仕事をしてるからだって聞いた。

だから、その娘であるわたしのことも良い子だって。


「ええ、そうね」


「じゃあ、強い冒険者さん達はみんな良い人なんですね」


「……そうだと良かったんだけど」


「ミレーユさん?」


「悲しいけれど、そうじゃない人がたまにいるのよ。その圧倒的強さでランクを上げざるをえない人とか、そもそも魔物狩りや迷宮攻略を中心にしてる人とか。単純に戦いや強さを求めたりする人が……もちろん、悪いことではないんだけど。そういった人は、人柄が良くない印象だわ」


「そ、そうなんですね……」


そ、そっかぁ……冒険者って言っても良い人ばかりじゃないんだ。

わたしの知ってる冒険者さんは、良い人たちが多いみたいです。


「あっ、別に脅すわけじゃないからね? ただ、良い人ばかりじゃないから気をつけてって話よ」


「はい、気をつけます!」


「良い返事ね。まあ、ソーマさんがいるから平気だとは思うけど……ところで、それは言わないの?」


「な、内緒です!」


それとは、わたしがお父さんに編んでいるマフラーというものだ。

寒暖の差があるので、日が暮れると使う人が多いらしい。

わたしはそれを、お父さんにプレゼントしようと思っていた。


「ふふ、きっと喜ぶわよ」


「そうだと良いんですけど……お父さん、体丈夫だからいらないかも」


「そんなことないわ。お父さんにあげたいっていう、その気持ちが大事なのよ」


「……が、頑張る!」


その後もわたしは、ミレーユさんに教わりながら編み物をするのでした。


お父さんが喜んでくれる顔を想像しながら……。



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