おっさん、異世界で生きていく
第36話 おっさん、生活に慣れる
この迷宮都市レガリアに来てから、早くも1ヶ月が過ぎた。
俺はその間に順調に依頼をこなしつつ、最下級のH級から三つ上のE級になっていた。
都市の中の地理にも慣れ、人々と交流も盛るにやっている。
ソラも俺に心を許し、他の人達とも少しずつ関わりを持ち始めた。
「お父さん! お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」
「ソーマ殿、お疲れ」
「クレアさんこそ、お疲れ様です。今日も、ありがとうございました」
「なに、気にするな。私も気晴らしになっている」
「えへへ! クレアお姉ちゃんに遊んでもらったよ!」
俺が何も言わずとも、ソラからクレアさんに声をかけるようになった。
今日も自分から『遊んでくれませんか?』と誘ったらしい。
とても良い傾向だと思う。
「ミレーユさんは?」
「あいつなら副業をしてるよ。何やら、久々に洋服を作るのに目覚めたらしい」
「すごいんだよ! こうささっと作っちゃって! わたしも、色々と教えてもらってるんだ!」
「そうみたいだな」
「そのうち、お父さんにも作ったげる! ……あっ、ミレーユさんに用事あったんだ!」
そう言い、階段を駆け上がっていく。
ミレーユさんはクレアさんのお古を使って、ソラの普段着を作っているらしい。
どうやら以前はよくやっていたそうで、その腕は確かだった。
正直言って俺も助かるので、それに甘えてしまっている。
もちろん、代わりに俺は料理を提供したりしている。
「はは、すいません」
「いや、悪いことじゃないさ。私のせいで、ミレーユには迷惑をかけてるからな……」
「……そうですか」
「すまん、気にしないくれ」
ここ一ヶ月でわかったが、何やら二人にも色々と事情がありそうだ。
無理に聞き出すことはしてないが、何か力になれたら思う。
……そうだ、あれなら力になれるじゃないか。
むしろ、今まで忘れていて申し訳ない。
「クレアさん、それでは……そろそろ鍛錬でもしますか?」
「なに? ……私としては有り難いが、良いのだろうか? お主は、毎日忙しそうに働いているだろうに」
「平気ですよ、ランクが上がったことで報酬も増えてきましたから。とりあえず、宿代を払っても貯金ができるくらいには」
「そ、そうか……それならお願いできるだろうか?」
「ええ、もちろんです。なんなら、今からでも良いですよ?」
俺の仕事効率も上がってきて、依頼によるが四時には帰ってくることが多くなった。
これからは、その後の時間を色々なことに当てることができるだろう。
「わかった! それでは、ミレーユ達に伝えてくる!」
「俺も着替えだけしてきますね」
……こういうゆっくりした日々は良い。
できれば、このまま過ごしたいものだ。
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