第28話 ソラ視点
……お父さん、まだかな?
宿屋の窓際に座って、外を眺める。
「……帰ってくるのかな?」
もしかしたら、私の知らないところで……二人に預けられたとか。
もう、ここには戻ってこないとか。
「……そんなことないよね?」
でも、私のいないところで内緒話をしてたし……。
出かける時も、二人に目配せをしてたもん。
「……いやだよぉ」
疑う自分も、捨てられるのが怖い自分も。
こんなんじゃ、また捨てられちゃう。
自分だって、こんなうじうじした子供嫌だもん。
「ソラちゃん? どうしたの?」
「あっ、ミレーユさん……」
「ごめんなさいね、うちのクレアが」
「い、いえ、平気です」
今はクレアさんが着替えるのを待っている状態みたいです。
なにやら、準備があるとかなんとか。
……うぅー、緊張する。
昨日はお父さんがいたから平気だったけど……。
「す、すまぬ! 待たせた!」
「まったく、仕方ありませんね……うん、いいと思いますよ」
「そ、そうか?」
クレアさんの格好は、昨日とは違ってました。
鎧姿ではなく、黒のロングスカートに、上には赤いセーターを着ています。
すらっとして、とっても綺麗……。
「……いいなぁ」
「おや? 気に入ったかな?」
「い、いえ! わたしにはそんなの似合わないので!」
そんな良い服なんて、もらえる資格もない。
まだ、何にも役に立ってないのに。
「……なるほど、これは重大だな」
「ええ。しっかりとお礼をするためにも頑張りましょう」
「う、うむ、慣れないことだが頑張るか」
「えっと……?」
なんの話をしてるんだろう?
「とりあえず、出かけるとしよう」
「ええ、そうですね」
その後、わけもわからないまま、外に連れていかれ……。
馬車に乗って、お洒落な人達がいっぱいの店に連れて行かれる。
辺り一面には、洋服が並んでいた。
「ここは……?」
「洋服屋さんだ。ここに入るには、鎧ではいけないからな」
「いけないこともないですけど、目をつけられるのも嫌ですし」
「そ、そういうことではなくて……」
自分が、ここに連れてこられた意味がわからない。
こんなところに来ても、虚しい思いをするだけ。
いつもそうだった……村の女の子達が可愛い服を着てるのを、良いなって見つめてた。
「簡単な話さ、ここで好きな服を選ぶと良い」
「……ふぇ?」
「お金は気にしないで平気ですよ。ソーマさんからお代は頂いてますから」
「……ど、どういうことですか?」
私の頭の中は、混乱状態です。
洋服? お父さん? どういうこと?
「そんなに難しい話ではない。我々はソーマ殿に恩を返したい。そしてソーマ殿は、我々に頼みことがしたい。その結果が、ソラに洋服を買ってあげることだった」
「ソーマさん、自分では女の子の洋服が買えないからって。まあ、下着とかもあるし難しいですよね」
「それはあるな。それに、こんなところに入ったら目立ちすぎる。良い男ではあるが、かなり厳ついからな」
「ふふ、そうですね。クレアが滅多にしないお洒落をするくいらには良い方です」
「な、な……」
「クレアさん、顔真っ赤だよ?」
「そ、そんなことはない! と、とにかく……そういうわけだ」
……お父さんが頼んだことって、もしかしてこれのこと?
だったら、お父さんは帰ってくる?
……わたし、お父さんを疑っちゃった。
「……こんなのもらう資格ないです」
「ん? どうしてだ?」
「ええ、そうですよ。ソーマさん、きっと喜びますよ?」
「……ほんとですか?」
「ああ、もちろんさ。喜ばなかったら、私が殴ってやるから安心していい」
「……ふふ、クレアさん面白い」
お父さんに捨てられてないとわかったからか、体が少し軽くなる。
それと同時に、この二人のことも好きになった。
人族にも、色々な人がいるんだなって。
「おいおい、笑うことないだろうに」
「す、すみません」
「いや、良いさ。というわけで、好きなものを選んでくれ」
「それとも、私たちで選びますか?」
「……自分で選びたいです。だって、お父さんに見せたい」
「ああ、それがいい」
わたしは店の中を見渡してみる。
すると、とある洋服が目に入った。
「……私、あれが良いです」
「ん? ……ああ、いいと思う」
「お値段も平気ですね。それじゃあ、後は小物を見繕っていきましょう」
その後、されるがままに着せ替えをされる。
そして、つま先から天辺まで見繕っていました。
「うんうん、似合ってるじゃないか」
「ええ、可愛いですね」
「あ、ありがとうございます……」
お父さん、似合ってるって言ってくれるかな?
……早く、帰ってこないかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます