第26話 おっさん、人助けをする?

 軽く早歩きをしつつ、都市の南口に向かう。


 そして、門の人に冒険者カードを見せる。


 おそらく、俺と同年代くらいの男性だ。


「すみません、依頼で外に出たいのですが……」


「おっ、見ない顔だな?」


「申し遅れました、新人冒険者のソーマと言います」


「て。丁寧にどうも。俺の名前はモンドだ。しかし、その歳で新人か……頑張れよ?」


 そう言い、俺の肩を軽く叩く。

 表情や態度からいって、バカにしてるような感じではない。

 どうやら、悪い人ではなさそうだ。


「お気遣いに感謝します。それと、申し訳ないのですが、薬草がどこにあるか聞いても良いでしょうか?」


「おいおい、そんなことも知らないのか……ったく、仕方ない。この門を出て少し南に行く。すると、そこから森に続く看板があるはずだ。あとは道を辿っていけば良い」


 なるほど……確かに、ここにくる途中にいくつか看板があったな。

 その時は他の話をしていたから聞けなかったが。


「ありがとうございます。それでは行ってみようと思います」


「おうよ、気をつけてな。行っておくが、一番近くの森に行くのは良い。ただ、奥の方には行くなよ? そこにはコボルトやオークなんかもいる。そいつらは弱いとはいえ、新人にとっては強敵だ」


「なるほど……わかりました、気をつけたいと思います。色々とありがとうございました」


「良いってことよ」


 門番……モンドさんにお礼を言った俺は、都市を出て森へと向かうのだった。





 その道中では、特に何もなく……すんなりと森の前に到着する。


「魔物も魔獣もいなかったな。まあ、都市周辺だから当たり前か」


 都市に来られても困るし、冒険者達も都市が近い方が狩るのは楽だ。

 おそらく、すぐに狩られてしまうのだろう。


「さて、目的の薬草を探すか」


 依頼書に書かれた絵があるので、それを頼りに森を歩いていく。

 その道中にて、キノコを発見する。


「おっ、キノコだ……ただ、食べられるか分からん。いや、俺は何を食べても問題ないんだっけ?」


 そういえばステータスに書いてあったし。

 体力が高ければ、身体が丈夫で状態異常になることもないとか。


「ふむ……とりあえず、少しだけ拾っておこう」


 薬草を入れるように持ってきておいた籠とは別に、キノコを入れる。


「おっ、あれはなんだ?……どう見ても果物だな」


 オレンジらしき果物があるので、それも籠に入れる。


「そういや、アイテムボックスみたいのはないのか? その辺も、あとで聞いてみるか」


 そんなことを考えつつ歩いてると、目的の薬草を発見する。


「……おし、色や形共に問題なし。これを、根元から引き抜くと」


 グッと掴んで、上ではなく横に引っ張るイメージで引っこ抜く。

 そうすれば、こういう系は綺麗に取れると習った。


「よしよし、問題なしと……ん?」


 その時、何か叫び声が聞こえたような気がした。


「……悲鳴か?」


 さて、どうする?

 冒険者とは、基本的に自己責任だ。

 依頼を受けるのも自分だし、それで死ぬことになっても自分が悪い。

 それに巻き添えを食う可能性もある。


「……だが、俺なら平気か。それに、知らんぷりをするような真似はしたくない」


 そうと決めた俺は、その声のする方へと駆け出していく。


 すると、何やら犬の化け物に襲われてる人を発見する。


「アルト! 私は良いから!」


「ガァァァ!」


 おそらく、あれがコボルトとかいう魔物か。

 二足歩行で全身が毛に覆われていて、生意気にも剣なんか持っている。

 メンバーは二人で、一人が怪我をしているのか。


「く、くそ! なんでこんなところにコボルトソルジャーが! 俺が引きつけるからお前だけでも逃げろ!」


「い、いやよ!」


 ……助けに来て正解だ、良い若者じゃないか。


 俺はそのまま、少年を庇うようにコボルトの前に立つ。


「だ、誰だ!?」


「ただのおっさんだよ」


「ガァァァ!」


「邪魔だ、若い芽を摘むんじゃない」


 クレアさんに譲ってもらった剣で、相手が剣を振るう前に——叩き斬る!


「グギャァァァ!?」


 身体に一直線の傷ができ……魔石となるのだった。



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