第21話 おっさん、絡まれる?
無事に冒険者登録も終えたが、まだクレアさんは戻っていない。
なので、ついでに聞いてみる。
「すみません」
「はい、なんでしょう?」
「初めに受けた方が良い依頼ってありますか?」
「そうですね……まずは雑用系とかですね」
「わかりました。それでは、何か依頼表を見てきますね」
「こちらから斡旋もできますが……」
「ありがとうございます。とりあえずは、自分で確認してからにします」
流石に異世界に来たから、不躾に色々と聞いてきてしまったが……。
個人的に、なんでもかんでも聞くのは違う。
まずは自分で調べたり、実行や確認して、それでもわからなかったら誰かに頼るものだ。
「わかりました。それでは、待ちしてますね」
「はい、色々とありがとうございました」
ひとまず挨拶をして、右側にある掲示板を眺めと……。
そこには受付に近い左奥から順に、ランク別に紙が貼ってある。
もちろん俺は、入り口付近の一番下のランクを眺めることになる。
「まずは近隣の住民と接していかないとかな? あとは、地理関係も知っておかないと」
冒険者をやるにしても、飲食店をやるにしても顔を売る行為は大事だ。
特に俺みたいな見た目と、よそから来た者には。
コツコツと仕事をして、少しずつ人柄を知ってもらわないと。
そうしないと、いざ店をやるときに困る。
「そうなると街の清掃、家の片付け、急募薬草取り……この辺りが良いか」
ひとまず、それら3枚の紙を剥がす。
あとは、これを受理して貰えば良いってことだ。
「……ん? なんだ?」
視線を感じたので、そちらを見ると……。
「ププッ……あのおっさん、清掃とか片付けだってよ」
「ギルドマスターの部屋に呼ばれるから、どんな奴が来たのかと思えば……」
「なんてことない、ただの新人のおっさんか」
……ああ、そういうことか。
まあ、仕方ない。
前の世界でも、三十五歳はおっさんだし。
すると、何やら若い男性が近づいてくる。
「おい、おっさん」
「うん? 俺のことかな?」
確かに目の前の男性は、俺より随分と若い……多分二十五歳前後。
身長175、体重は80キロってところか。
ゴツイ体に、精悍な顔つきをしている。
ただ、纏ってる空気感はあまり良くない。
少しやさぐれている感じだ。
「ああ、そうだよ。なに、ジロジロ見てんだよ?」
「いや、すまない」
「ちっ、良い歳こいて冒険者か? そんな甘いもんじゃないぜ?」
「忠告感謝するよ。それじゃ、俺は依頼を受けるので」
これ以上目立つのは良くないと思い、俺が動こうとすると……その男に肩を掴まれる。
「おい、待てよ」
「うん? 何か用かな?」
引っ張られるので、少し力を入れて立ち止まる。
当然……俺の身体が動くことはない。
「おっ!? ……このおっさん」
「それじゃ」
そして、急激に力を抜けば……彼が尻餅をつく。
「ま、待て……とっ!?」
「おいおい! ダイン、何やってんだよ?」
「絡んだ癖にダセー」
「悪いね、急いでるもので」
彼が周りの冒険者達に野次を飛ばされているのを尻目に、俺は先ほどの受付に向かう。
「アリスさん、依頼をお願いします」
「この方……今の攻防だけでわかりますね」
俺が話しかけるが、どこか上の空といった感じだ。
多分だけど、さっきのことについて考えているのかも。
「アリスさん?」
「あっ、ごめんなさい!」
「すみません、早速問題を起こしそうになって……」
「いえいえ、あれくらいは日常茶飯事なので。では、依頼を確認します……うんうん、良いですね。ちなみに、都市のことや人々を知るためですか?」
「ええ、そうです。まずは、そこから始めようかと思っています」
「ふふ、良い心がけですね」
そんな会話をしつつも、慣れた手つきで書類にハンコやサインを書いていく。
「はい……これで受理されました。あとは、その紙を持って指定の場所にいけば良いです。今日はもう夜なので、明日からよろしくお願いします」
「わかりました。それでは、明日から頑張ります」
冒険者か……年甲斐もなく、楽しみになってきたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます