第2話

 ねえ、しぃちゃん。

 友達になろうって言ったあの日から、私たち友達らしいこと一回もしなかったよね。


 何すればいいか分からないって言ってたけど、ゾンビ同士の友達がどんなことをするかとか、私も分からないよ。


 夜の公園。

 しぃちゃんがねぐらにしているゴミ箱の蓋を開ける。

 中でしぃちゃんがぐっすり眠っている。

 ゴミ箱を押し倒して、しぃちゃんの頭がまろび出る。


 私は屈んで、眼窩に指を突っ込んでしぃちゃんの左眼を抉り出す。

 次は、私の左眼を、慎重に。


 右側の視界と、左側の視界で色味が違う気がする。

 虹彩異色を体験したあと、右眼も同じように入れ替える。


 眼が変わるだけで見た目の印象は大きく変わる。

 ゾンビのコスプレをしてる人間みたいだったしぃちゃんが、今では完璧なゾンビだ。

 私はより人間に近づけた。


 目ん玉ひん剥いて入れ替えたけど、しぃちゃんは起きない。

 私は耳元で語りかけたい気分だった。


 お互いの持ち物を交換するって、初めて友達らしいことしたね。

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眼を腐らせたいゾンビ 苦贅幸成 @kuzeikousei4

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