出会い
……えー、新入生の皆さん本校の生徒という意識を持ち、この3年間という期間を、短いですが、それぞれ意味のあるものにしていきましょう。
校長の話ってのはどうして短い文章をこうも長い時間をかけて言うのか不思議で仕方がない。
普段、動画を二倍速で見てる僕からしたらスローすぎて退屈になってしまう。
僕達は話を聞いた後、それぞれ自分の教室に向かう。もう既に仲良しグループであつまっているところもあった。まぁこういう人たちはたいてい中学生の時からの縁だったりする。
僕も幼馴染の颯と共に1年3組の教室に向かっている。
「あー、疲れた。しょうは全然疲れてなさそうだね」
「そう見えるかな?僕も疲れたよ。でも、今日の朝に見た桜の景色思い浮かべていたらいつの間にか話が終わってたよ」
僕は微笑を漏らしながら颯の言葉に耳を傾けた。
「いや、乙女かよ!あーでもしょうのお母さん見たいって言ってたもんね。」
「じゃあさ今年も俺の家にある桜でお花見しようぜ!光と愛花も呼んで」
光とは僕の弟で、愛花とは颯の妹のことだ。僕達は家が近いということもあり、小さい頃からよく一緒に遊んでいる。毎年春になると颯の家でお花見をしている。
「それは楽しそうだね、颯の家の桜は今年も綺麗に咲いた?」
「もちろん、今がちょうど満開で綺麗だぜ!まぁ綺麗さでいったら川の近くの桜並木には負けるけどね」
颯の性格はとても明るいので元気をもらえる。特に母が亡くなった時には凄く助けられた。
「恋代莉にも声かけておく」
「わかった、ありがとう」
恋代莉も同じく幼馴染で小さい頃はよく一緒に遊んでいた。毎年お花見にも参加しているが、恋代莉は友達も多く空いていない日も多い。
キーン、コーン、カーン、コーン
教室に担任の飯田先生が入ってきた。
年齢は30代前半といったところだろうか。割と若めの先生である。
入学式の日といえばやはり自己紹介から始めるのだろうか。
「えー今日からこのクラスの担任となる、飯田晃です。趣味は音楽を聴くことです。何かおすすめの音楽があったら教えてくれると嬉しいです。1年間よろしくお願いします。」
教室内には拍手が鳴り響く。
拍手が鳴り止むと次は生徒の自己紹介に移る。青山さんから始まり、例文のように自己紹介する者もいれば笑いをとりにいく者もいる。そして恋代莉の順番が回って来た。
「笠白恋代莉です。趣味はテレビを見たり、美味しい物を食べたりすることです。1年間よろしくお願いします」
最近はあまり話していなかったが、小学生の時から恋代莉の趣味は変わっていなかったようだ。
そして僕、颯と順番が回り自己紹介は滞りなく進んだ。
その後は一旦休憩を挟み委員会を決めていくことになっている。
「翔は委員会何にするの?」
「本好きだし図書委員にしようかなと思ってる」
「図書委員か、俺には合わなさそうだな」
「確かに、颯は体育委員とか学級委員とか合いそう」
「学級委員か、翔が言うならやってみようかな」
キーンコーンカーンコーン
授業開始の鐘がなり立って話していた人たちは自分の席に戻っていった。
颯は予定通り学級委員になった。颯は真面目なので安心して任せることができる。
ここで予想外だったのは恋代莉が図書委員会に手を挙げていたことだ。
僕と恋代莉以外に手を挙げる者はいなかったので、僕達2人は図書委員会になった。
今日は午前のみの授業で帰ることになっている。
「かけるー、一緒に帰ろう」
「うん、僕も誘おうと思ってたところ」
「お花見の話もしたいし、恋代莉も誘ってくるわ」
「ありがとう」
恋代莉は他の子と話をしている。そこへ颯はなんの躊躇いもなく入っていき、一緒に帰らないかと聞いている。俺たちの関係を知らない人たちからすれば、急に入って来て指名して一緒に帰ろうだなんてびっくりするだろうな。僕には無理だ。
予定通り恋代莉は一緒に帰ることになった。
「一緒に帰るの久しぶりだね、なんか用でもあった?」
恋代莉が話しかけて来た。お察しの良いことで、何か用があるのか聞いて来た。
「今年も俺の家でお花見しようと思ってるけど、恋代莉も来るかなーって聞こうと思って」
「お花見の話ね!もちろん行きたいな。今年も綺麗に咲いた?」
「翔と同じこと質問するやん。もちろん綺麗に咲いたよ」
「翔も同じこと質問してたんだ。お花見いつするの?」
「急だけど、明日はどう?」
「私は問題ないよー」
2人の話が弾み、僕が入る隙がなくここまで空気となっていた。
「僕も問題ないよ」
「じゃあ明日11時に俺の家集合な」
僕達はそれぞれ帰路についた。
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