第5話

 盗賊は、『黒山賊』だった。

 あれだ……。呂布に討たれる人達だ。

 根城に近づくと、撃って出て来た。単純な人達だな~。


 正面の軍は、張郃将軍に任せる。私は、別動隊を率いて、盗賊の根城を襲った。


「食料を溜め込んでんだな~」


 盗賊たちが慌てて戻って来たけど、門を閉じて応戦する。

 その背後を、張郃将軍が撃ってくれて、盗賊は霧散した。殲滅はしないけど、どこかで真面目に生きて欲しいと思う。

 それと……、仕官したいとか言って来た人が多く現れた。

 私の政策と黒山賊討伐で、評価が高まったらしい。

 人手不足なので、これはありがたい。ありがたいんだけど……。

 一人、すっごい人がいた。


「そんじゃ、食料の輸送をお願いしますね。張遼将軍」


「はっ! お任せを!」


 曹操の部下筆頭が、今私の下で働いてんだけど……。

 何だこの状況?


 ちなみに曹操は、正史通りに城を三つ貰って軍を立て直している。青州兵を得られなければ、曹操の快進撃も始まらない。兗州刺史の劉岱も死亡させない。鮑信も生きているし、曹操は……大丈夫かな?


 もう一人、袁紹だ。食糧不足に悩んでいるみたいだ。こちらも大丈夫かな? 決断の遅い人物だし、殿は成功続きで自信を取り戻している。兵権を譲ることはないと思いたい。

 公孫瓚も、冬は進軍しないと思うので、易京城でも作っている頃だろう。烏桓族の脅威は、残っているはずだ。


「青州の百万人の民……。河北の未来を決めるのは、彼等なんだよね」





 本格的な冬が始まった。

 塩を売って穀物を買い、海の幸で飢えを凌いで行く。

 幸いにも、盗賊は現れなかった。どうやら、黒山賊を討伐した話が広まって、私は戦上手と思われているみたいだ。文官なんだけどね……。


 兵士たちには、獣を狩って貰い、自分たちの食料にして貰っている。誰もが苦しい時期だ。

 だけど、百日乗り越えれば、暖かくなる。それまでに、どれけ死者を減らせるか……。

 青州一丸となった、人命救助作戦が続けられた。

 そんな時だった。


「ほう? 見事な猪だな」


「はい、若者が狩って来まして、面会を求めています」


 今、食料以上に必要なモノはない。対価に何を望んで来るんだ?

 ……会ってみるか。


「君か? 猪をありがとう」


「はっ!」


 超美形の青年だな~。


「名前を教えて」


「趙雲と申します」


 ごふ?

 蜀漢の五虎大将軍ですか?





 超雲は、私の秘書になって貰った。まあ、護衛だな。計算もできるので、とても有能だ。各地の伝令をまとめてくれてもいる。

 まだ若いので、学んで貰い、後に兵権を渡す予定だ。


「……今日も餓死者なしです。それと、盗賊も出ていません」


 いいね、いいね。この一体感。部下に、張郃、張遼、超雲を筆頭として、有能な人材が集まっている。河北オールスターズと言ってもいいんじゃない?

 もう、私を青州牧にって話もあるくらいだよ~。受けないけどね。

 謙虚に、謙虚に行きましょう。


 そして、春となった。草木が芽吹く。

 全てを救えたとは言わない。だけど、青州の黄巾賊は発生しなかった。これで、河北の動乱は、その大半が抑えられたことになる。まあ、まだ脅威はいるけどね。


 袁紹は、食料不足で兵士を解雇したみたいだ。兵士が少なくなったので、冀州乗っ取りはないな。今後は、顎でこき使ってやろう。

 私は青州牧代理なのだ! 兵権も持っている。

 公孫瓚は、烏桓族に攻められているらしい。易京城は、モグラ戦術で落とせることが分かっているので、私には脅威にならない。


 兵を集めに曹操も来たけど、あんまり集まらなかったみたいだ。郭嘉かくかの予知能力も、私の転生知識に先越されて、その有能さを発揮できていない。

 それと、曹操は小さかった。130センチメートルという話だ。


 青州は、畑を耕し始めた。揉み種もある。順調かな。イナゴの被害が怖いけど……、この年には発生しないはずだ。





 数年が過ぎた。全てが順調だった。兵数も兵糧も十分だ。公孫瓚・袁紹・曹操は、兵力差を理解して攻めてこようとはしない。

 まあ袁紹は、もう私の部下なんだけどね。部下も含めて吸収してやった。ちなみに、仲の悪くなる沮授と田豊は、地方に左遷ね~。もう栄転はないよ。


 途中で、于禁うきんが来た。三国志演義被害者筆頭だ。

 実際は、強いんだけど、性格がね~。彼は、パスだ。兗州に行くことを勧めた。


 あと、人事として欲しいのは、諸葛瑾かな~。でも、徐州に住んでんだよね。それと、今何歳くらいだ? 成人するまで、もう数年かかるかな?

 まあ、曹操の大虐殺はもうない……と思う。そのうち、諸葛家を探してみよう。



 順調だと思った時に、落とし穴がある。

 殿からの呼び出しだ。


 何だろう? 急いで、冀州へ向かう。


「お~、郭図君! よくやってくれたんだも~ん。収入が数倍になってんだも~ん」


「それで、殿! 火急の相談とは?」


「これを見て、欲しいんだも~ん」


 木簡を見る。

 献帝から? 洛陽にいるので復興を手伝え?

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