第2話
「殿……。私に騎兵千人をお貸しください。公孫瓚軍を追い払って来ます」
「うむ? え? 君、郭図だよね? 文官でしょう?」
時間がないんだよ。この後、董卓討伐軍を解散させた袁紹が来るんだよ。
その前に、公孫瓚を追い払わないと、冀州を乗っ取られるんだよ。
そもそも、渤海郡の太守でしかない袁紹に乗っ取られるなよ!
あんた、冀州牧だろうに!
部下に乗っ取られるなよ!
兵権譲るなよ!
いや、土地を譲るなよ!!
……ゴホン。話を元に戻そう。
「冀州と幽州の境には、多くの川があります。橋を落とせば、公孫瓚を動揺させられるでしょう。糧道を断つのです!」
「ほう? いいね、いいね。戦略的って感じ、さすが軍師だよ。失敗してもいいから行って来て!」
さっき文官と言っておいて、今度は軍師か……。
責任を負わない上司など、会社の癌でしかない。
その典型だな。でも、決断が速かったのは褒められる。
こうして、私は騎兵を率いて出陣した。
◇
公孫瓚は、兵を一ヵ所に集めて陣を築いていた。
とにかく、遠回りの進路を取って背後に回る。時間が掛かっているかもしれないが、無駄な戦闘は避けたい。
時には、川を馬で渡り兵法には則っていない道を進んだ。
兵士たちは、不満を言わずに着いて来てくれる。
この出兵の重要性を理解しているみたいだ。どうやら、精鋭を借りられたみたいだな。
「郭図将軍。前方に輜重が見えます!」
部下に言われて、私も気が付いた。
あれが、公孫瓚軍の糧道なんだな。遠目に確認する。
「護衛の兵士がほぼいない……」
油断しきっている。後方を突かれるという発想は持っていないのか。冀州を舐めきっているな。まあ、殿があれだし……、それもそうか。
橋を落として糧道を断つ予定だったけど、追加で兵糧も奪うか!
「行くぞ! 着いて来い!!」
「「「おお!!」」」
◇
あっさりと、兵糧が奪えた。奪えちゃったよ。
これどうしようか……。
「五千人の一ヵ月分くらいの食料だよな……」
「持ち帰れば、大手柄ですよ!」
アホい。その前に、公孫瓚に襲われて終わりだろうに。
考える……。
燃やすのが、確実だけど悪手だとも思う。
『何かの戦争で、兵糧を隠す話があったよな……』
俺のオタク知識を総動員して考える。
戦争では、兵糧は重要なファクターだ。それは、古代も近代も変わらない。
一手で、複数の効果を得たいな。ここは、妙手を打つ場面だ。
「……あの手で行くか。その前に橋に火をかけて使えない様にしてね。落としちゃってね~」
「はっ!」
手際よく、橋に火が付いた。油が発明されているのか分からない古代でも、短時間で燃え上がらせてくれた。いいね、精鋭って感じがする。
いい狼煙になったかな?
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