【出れば負け軍師】に転生しちゃったよ~正史と演義の知識で歴史改変~
信仙夜祭
第1話
今私は、軍を率いて移動中だ。
まあ、なんだ。敗戦しての撤退だ。
もうね、城に着いたら何を言われるか……。戦々恐々なんだよ。馬に乗ってんだけど、帰りたくないんだよ。
そんな道中だった。
「のう……、
横を見る。
冀州太守の
「殿……、何か?」
「袁紹殿の檄に応えて挙兵したのはいいのだが、洛陽を焼かれて敗戦ではないか。この後どうしよう……」
おいおい。仮にも冀州牧だろうに。そんな弱気な発言は、士気に関わるぞ。
「問題は、食糧でしたな。思いの外、兵が集まり過ぎました。補給さえ続けば、あるいは行けたかもしれませんが……。それと、都を焼かれるとは思いませんでしたな」
「敗戦の事実は変わらんだろう……。帰りたくないな~」
ダメだこいつ……。器小っちゃい。
それと、敗戦したら誰だって帰りたくないよ。
◇
今は幕舎で休んでいる。
食事も喉を通らなかった。そして、頭痛が酷かったので、早めに休むことにした。
寝床で頭痛に苦しみながら、眠れない夜を過ごす……。
起きているのか、寝ているのか……。
まどろみの中で、何かを思い出して来た。
「正史三国志……。三国志演義……。シミュレーションゲーム?」
苦しみの中、私の前世の知識が、少しだけ蘇った夜だった。
朝起きて、確認する。
幕舎を出て、野宿している兵士たちを見て回る。
まだ朝日が昇った時間なので、皆寝ているな。
「俺……、
冷汗が出て来た。
前世の俺は、学生だったみたいだ。三国志オタクだったとしか思い出せないが。
そして、これから起きる歴史を知ってしまった。
今は、董卓討伐軍から離脱した直後だ。
ここから俺は、上ったり下ったりして、最後に曹操に殺されてしまう。
『やべぇよ……。このまま冀州に帰ったら
「どうしたの、郭図?」
後ろを振り返る。
「これは、殿。おはようございます」
「うむ、早起きなのね」
「昨晩は、早めに就寝いたしましたので……」
その後、適当な雑談をしながら、宿営地を一周した。
そして、遠くに旗を見つけた。
「あれは……、何処の軍旗でしょうか?」
「うん? 公孫瓚殿じゃないんかい?」
うわ~。やべぇよ。討伐軍から離脱するタイミングも一緒かよ。
あの軍が、幽州に行かずに、冀州に攻め込んだら、大混乱だぞ。
「殿……。急いで帰りましょう。冀州が狙われています」
「なに?」
◇
俺の予想は当たった。
公孫瓚は、冀州に襲いかかって来たのだ。
冀州軍は、軍を解かずに各地の城に駐屯させたので、公孫瓚軍を迎撃できている。
「郭図……。見事な予想だったのよ。見直したのよん」
あれ? 正史三国志だと、この時の韓馥は、恐怖心で震えていたはずだけど?
それと、この後に袁紹軍が来る。
「もしかして、歴史が変わっている? 行けるか?」
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