【出れば負け軍師】に転生しちゃったよ~正史と演義の知識で歴史改変~

信仙夜祭

第1話

 今私は、軍を率いて移動中だ。

 まあ、なんだ。敗戦しての撤退だ。

 もうね、城に着いたら何を言われるか……。戦々恐々なんだよ。馬に乗ってんだけど、帰りたくないんだよ。

 そんな道中だった。


「のう……、郭図かくと


 横を見る。

 冀州太守の韓馥かんふくだ。一応、俺の主様。


「殿……、何か?」


「袁紹殿の檄に応えて挙兵したのはいいのだが、洛陽を焼かれて敗戦ではないか。この後どうしよう……」


 おいおい。仮にも冀州牧だろうに。そんな弱気な発言は、士気に関わるぞ。


「問題は、食糧でしたな。思いの外、兵が集まり過ぎました。補給さえ続けば、あるいは行けたかもしれませんが……。それと、都を焼かれるとは思いませんでしたな」


「敗戦の事実は変わらんだろう……。帰りたくないな~」


 ダメだこいつ……。器小っちゃい。

 それと、敗戦したら誰だって帰りたくないよ。





 今は幕舎で休んでいる。

 食事も喉を通らなかった。そして、頭痛が酷かったので、早めに休むことにした。

 寝床で頭痛に苦しみながら、眠れない夜を過ごす……。


 起きているのか、寝ているのか……。

 まどろみの中で、何かを思い出して来た。


「正史三国志……。三国志演義……。シミュレーションゲーム?」


 苦しみの中、私の前世の知識が、少しだけ蘇った夜だった。



 朝起きて、確認する。

 幕舎を出て、野宿している兵士たちを見て回る。

 まだ朝日が昇った時間なので、皆寝ているな。


「俺……、郭図かくとなんだよな。ネタで、【出れば負け軍師】って呼ばれるやられ役……。ヤバくね?」


 冷汗が出て来た。

 前世の俺は、学生だったみたいだ。三国志オタクだったとしか思い出せないが。

 そして、これから起きる歴史を知ってしまった。


 今は、董卓討伐軍から離脱した直後だ。

 ここから俺は、上ったり下ったりして、最後に曹操に殺されてしまう。


『やべぇよ……。このまま冀州に帰ったら公孫瓚こうそんさんに攻められるじゃん。そんで、袁紹えんしょうに冀州を奪われて、曹操に負ける。だけど、この時点ならまだ何とかなるんじゃね?』


「どうしたの、郭図?」


 後ろを振り返る。


「これは、殿。おはようございます」


「うむ、早起きなのね」


「昨晩は、早めに就寝いたしましたので……」


 その後、適当な雑談をしながら、宿営地を一周した。

 そして、遠くに旗を見つけた。


「あれは……、何処の軍旗でしょうか?」


「うん? 公孫瓚殿じゃないんかい?」


 うわ~。やべぇよ。討伐軍から離脱するタイミングも一緒かよ。

 あの軍が、幽州に行かずに、冀州に攻め込んだら、大混乱だぞ。


「殿……。急いで帰りましょう。冀州が狙われています」


「なに?」





 俺の予想は当たった。

 公孫瓚は、冀州に襲いかかって来たのだ。

 冀州軍は、軍を解かずに各地の城に駐屯させたので、公孫瓚軍を迎撃できている。


「郭図……。見事な予想だったのよ。見直したのよん」


 あれ? 正史三国志だと、この時の韓馥は、恐怖心で震えていたはずだけど?

 それと、この後に袁紹軍が来る。


「もしかして、歴史が変わっている? 行けるか?」

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