第71話 暗雲
10日が経ち、だいぶ魔力がコントロールできるようになっていた優希は、絨毯を使って魔法塔へ来ていた。
だいぶ歩けるようにはなっていたが、まだ階段を登る事ができないでいたからだ。
そして、ほぼ毎日の様に魔法塔で他の人達と訓練をしていた。
魔法のみが使える者、魔法と剣が使える者それぞれに合った戦術を教えていた。
魔法石にそれぞれの魔力を蓄え、一属性しか持たない騎士達に他の魔力も扱えるように訓練をし、同じように一属性しか持たない魔法使いには、魔法陣を組み合わせた物を教え、それを使った戦い方を一緒に研究していた。
クロードとモーリスは政務をこなしながら、宝珠と王都の警備や、万が一国を巻き込んだ時の対処策などに力を入れていた。
それぞれがそれぞれの役割を持ち、いつ来るかわからない奇襲に備えていた。
「優希様、どうやら雨が降るようです。今日はこれ位にして邸宅へ戻った方が良いかもしれません」
魔導士が空を見上げながら優希に声をかけると、優希も窓に近付き空を見上げる。
そして、ボソッと呟いた。
「バカなんだろうか・・・・」
その言葉に魔道士が訳もわからず、ただひたすらに謝り始めた。
「申し訳ございません。私、どんな不手際をしたのでしょうか?」
その声に、優希は慌てて手を振り、違いますと言い訳をする。
「あなたに言ったんじゃないです。すみませんが、通信機を貸してもらえますか?」
優希にそう言われ、魔導士は慌てて通信機を取り優希に持たせると、優希はコホンと咳払いをして、通信機に向かって口を開く。
「あ、あー・・もしもし、全員この声が聞こえますか?優希です」
その声に反応してか、通信機から聞こえますと色んな人の声が聞こえてくる。
その声の中に、クロードとモーリスの声も聞こえる。
優希はため息をつくと、またゆっくりと口を開く。
「空を見てもらえますか?これはただのどんより雨雲ではありません。どうやら敵はおバカな様です」
その声に、クロードがどういう意味だと尋ねてくる。
「俺は女神様と通じ合っています。なのに、気付かないと思ったのでしょうか。皆さん、奇襲が来ます。今すぐ戦闘の準備を始めてください」
突然の奇襲宣言に、通信機の向こう側は黙り込むが、優希が再度、声をかける。
「聞こえてますか?これは雨雲ではありません。恐らくこの国を暗闇にするつもりです。天気を操れるほどの力なら、相手はおバカですが、苦戦を強いられるはずです。万全の準備をして、訓練を活かしてください」
それでも、黙ったままの通信機に優希はスーッと息を吸い込み叫ぶ。
「奇襲です!」
その声にやっと反応したのか、通信機から慌ただしく声が飛びかう。
そして、魔塔にいた騎士達も慌ただしく出ていく。
「クロードさん、モーリスさん、俺は城の高い所に行き、様子を見てきます。なので、騎士達の配置と、街へ魔道士達を配備してください。恐らく街へ被害が出るかもしれません」
「わかった。優希、気をつけるんだぞ」
「わかっているな?1人で無理はするんじゃないぞ」
2人の言葉に返事を返すと、優希は絨毯に乗り城の屋根へと上がる。
雲は雷の様な光を纏いながらゆっくりと広がっていく。
目を凝らすと、中央が渦の様になっていて、そこから何かが出て来るのが見える。
それは、ゆっくりと優希の元へと向かっていた。
「クロードさん、モーリスさん、何かがこっちに来ます。宝珠の警備お願いします。俺は一旦下に降りて、騎士達と合流します」
優希はそれだけを伝え、一気に降下していく。
中央広場に集まっている騎士達に、何かがこっちに向かっていると伝えると、一斉に空を見上げ体制を整える。
絨毯から降りた優希は皆に指示を出す。
「俺はあの中からボスを見つけ対応します。皆さんは援護をお願いします。それから、中へ入られないように気をつけてください。王様と宝珠を守るのです」
優希の声かけに皆は返事を返す。そして、見上げていた空にそれらが現れた。
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