第59話 作戦会議
「お前は、ゆっくり休むと言う事を知らんのか!?」
モーリスは呆れ顔で、いきなり会議場に現れた透き通った姿の優希を睨む。
その姿に周りはざわめくが、クロードも人目を憚らず口を開く。
「そうだぞ、優希。ゆっくり休んで早く起きてくれないか?優希の笑顔が見れるのは嬉しいが、これでは抱きしめられないではないか」
優希を嗜めるクロードに、優希は頬を膨らまし、文句を垂れる。
「俺だって、ゆっくり休みたいんです!でも、女神さんが力を遮られてるせいで、俺の所ばっかり来て色々言ってくるんです!本当に人使いが荒すぎる!」
「・・・優希様、バチが当たりますぞ・・・」
事もあろうか神に文句を言う優希に、大司祭は戸惑いながら声をかける。
「それで、神はなんと?」
ため息を吐きながらモーリスが問うと、優希もため息を吐きながら答える。
「最初の魔物は王都から西に、二日ほど行った町外れの森に出るそうです。そこには凶暴化した獣の群れが現れるので、剣術に長けた人と、念の為、魔法戦力が使える人を連れて行ってください。それから、闇の力が増してるそうです。俺ももうすぐ目覚めると思いますが、念の為、俺の体にも護衛を付けてください」
「それなら私が残ろう」
クロードが素早く名乗り出るが、優希は即答で断る。
「クロードさんとモーリスさんは指揮を取るのに必要な人材です。それに、どんな性質の獣かまだわからない以上、魔法も剣術も長けている2人が行かないと、他の人達が危険に晒されます。部下の命も大事な民の命と一緒です。2人が守らなくてはいけない命です。王様や2人が部下と民の命を守り、部下の皆さんは王族と民を守る・・・そうやって絆を固めないとこの戦いは負けます」
優希の言葉に誰もが口を紡ぐ。
そんな中、優希はニカっと笑い、いい考えがあると親指を立てる。
「今すぐ魔塔から人を集めてください。それから、俺の部屋にある魔法陣も持って来てください。あ、あと魔石もできるだけかき集めてください」
「何をする気だ?」
「魔法具を作るんです。ブレスにあった通信機器と空飛ぶ絨毯、そして召喚具」
優希のドヤ顔に周りが眉を顰める。
「残念ながら移動魔法はまだ完成していません。なので、馬は最後の町で調達するよう先に人員を向かわせ、残りは準備が出来次第、絨毯で移動します。魔力量で飛ぶ速さは変えれますので、ここに残る魔法師達の魔力を貯めましょう。そして、飛ぶ為に練習が必要になりますが、そんなに時間は避けれないので、通信機器で互いに何かあった時に連絡を取るんです」
「なるほど・・・それは効率がいい」
クロードが笑顔で応えると、優希が親指を立てる。
モーリスは少し考え込んでから口を開く。
「では、召喚とはなんだ?」
「俺です!」
優希の得意げな表情にまた、みんなが眉を顰めた。
「何かピンチが訪れた時に俺を召喚するんです。その時に目覚めてたら、生身で行きますが、無理な時はこの姿で手伝いに行きます」
「お前はまた何を・・・」
「二つの珠を体に入れた事で魔力が戻ってきてる気がするんです。だから、俺も何か力になれると思います」
「優希、それは危険だ。今はゆっくり体を休めてくれ」
懇願するように言葉を発するクロードに、大丈夫と微笑む。
「俺は2人を、みんなを守る為に戻ってきたんです。ですが、生身でいければいいんですが、もしこの状態でいけば大して役に立たないと思います。でも、何かしら力になれるように努力するつもりです。このまま寝てるだけより、大事な家族を守りたい。だから、俺は負けません」
「ふん。お前は言い出したら聞かんからな。それも含めて対策を練ろう」
モーリスの言葉にクロードも頷く。優希は安心したかの様に口を開く。
「お願いしますね。俺は実践はとんとわかりません。前は訳がわからないまま終わってしまったので・・・・ここはクロードさんとモーリスさんの腕の見せ所です。俺の命もみんなの命も2人の指揮にかかってますからね」
優希の激に2人は頷く。すると優希は盛大なため息を吐く。
「あの一時間程寝てきます。女神さんが頻繁に来るせいで寝不足です。全く・・今度きたら説教してやります」
「お前な・・・」
「優希、遠慮しないで寝てくれ。私も睡眠の邪魔をしないよう祈ってやる」
「さすがクロードさん!サイコーです!」
親指を立てて笑顔を見せる優希に、クロードも親指を立てて笑顔を返す。
「お二人とも・・・バチが・・・」
呆れた顔で大司祭が口を挟むが、2人はお構いなしに微笑みあった。
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