第48話 新たな展開

「さて、次はそなたの件だ」

そう言って、王は視線を優希に向ける。優希は慌てて涙を拭い、王を見つめる。

「そなたの国へ貢献は大きい。この感謝は国の王として、そして1人の父親として感謝し尽くせない。多大なる貢献に勲章を与える」

王の言葉に、モーリスはトレイから紋章の入った小さなブローチを手に取り、優希に近寄る。

「これは、どういった服なのだ。どこに付ければ・・・」

小さな声でぼやくモーリスに、優希はニコニコしながらジャケットの胸を指差す。

「ここに付けてください。今日は魔法使いの衣装です。かっこいいでしょ」

モーリスは指さされた場所にブローチをつけながら、まったく・・と呆れた顔で笑う。ブローチを着け終わり、モーリスが離れると王が言葉をかける。

「他にも褒美をやろうと思うが、何か望む物はあるか?」

「いえ、ありません。ただ、このままクロード王子と過ごす事をお許しください。ですが、今後、第二後継者となれば、いずれ政治的な婚姻が必要となると思います」

「なっ、優希!」

慌てて口を挟むクロードに優希は首を降る。

「これまでモーリス王子が1人で背負ってきた物を、クロード王子も一緒に背負っていかなければなりません。それは婚姻についても一緒です。できれば、モーリス王子も好きな女性と一緒になる事を望みますが、それもままならないのであれば、クロード王子もそれを受け入れなければならないと思っています。それが、この先、2人で国を支えると言う意味に繋がるからです。ですが、私は心からクロード王子を愛しております。この国では同性婚も、一夫多妻も可能だと聞いております。なので、私は第二で良いので、側にいる事をお許しください」

そう言って頭を下げる優希に、クロードはかける言葉が見つからなかった。


「あっ・・・もう一つ、お願いがあります」

慌てて頭を上げる優希に、王は何だと問いかける。

「私に仕事をください。この足ではまともな仕事は出来ませんが、このまま一方的にお世話になるのは、私の性に合いません。そうですね・・・私の魔力上げ訓練の為にも魔法に通じた職を望みます」

「ふむ・・・話は聞いておるが、我が国にまた貢献してくれると言うのか?」

「はい。以前はこの国ではなくクロード王子に仕えると申しましたが、今はこの国の役に立つ事が私の役目となりました。ここにいる為に、心から忠誠を尽くすつもりです。そして、クロード王子とモーリス王子の支えになるつもりです」

真っ直ぐに力強く見つめる優希に、王は手を顎に当て少し考える。

「陛下!勝手ながら発言をお許しください」

そう言って手を上げたのは、大神官だった。

「優希様の力が元に戻るのであれば、聖女としての力も戻る可能性もあります。ぜひ、神殿でのご協力をお願いしたい」

「陛下!私の発言もお許しください。優希様の魔法は稀に見る力です。その力はぜひ、魔塔で使うべきです」

横から紫のコートを羽織る男性が声を上げる。その声に王は静かに答える。

「この件については、後ほど折り合いを付けよう。その前に婚姻の件だが、私もかつては王妃を心から愛しておった。互いに愛する事がどれほど大きな力になるのか、私は知っておる。だから、なるべくは息子達にも愛ある結婚をして欲しいと望んでいる。だが、政治的な物が入らないとは言い切れない。それは貴族や皇族には切り離せない問題だ。私はそなたがクロードと一緒になる事はまだ認めるとは言い切れない。だが、側にいてクロードの力になってくれると誓うのであれば、私も考えよう。正妃になるのか、側妃になるのはそれからだ」

「はい、今は側にいれればそれでいいです」

優希はお礼を述べながら頭を下げた。


今後の事はまた別の日に会合を開くと告げ、王は立ち去るが、優希とクロードの周りには挨拶をする人達で溢れていた。

その中でも大神官と魔塔の話は長々と続いた。

苦笑いしながら受け答えしている優希とは裏腹に、沈んだ表情を浮かべるクロードがいた。

それに気付いた優希は少し大きめな声でクロードに声をかける。

「クロード王子、本来なら歩かなくてはいけませんが、少し疲れたので運んでいただけますか?」

「あ、あぁ。皆の者すまない。まだ、優希は戻ってきたばかりで疲れが取れていない。今日はこれで失礼する」

そう言うと優希を抱き抱える。優希はそっと耳元で囁く。

「部屋で話しましょう」

クロードは頷くと足早に歩き始めた。

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