第40話 変わらない愛
その日、仕事から帰宅した優希は、ベットの上でブレスを見つめていた。
あれから5日も連絡していない。
このまま切れてしまった方がいいと思う反面、まだ離したくと言う想いとで優希は葛藤していた。
でも、終わらせるにもきちんと断らないといけない。
こうしている間にも解析作業に時間を割いているかも知れない。
もしかしたら無駄になるかも知れないのに、きっとクロードは可能性に賭けて準備しているろう。
この一ヶ月、クロードと毎日話してクロードの人柄は充分伝わっていた。
だからこそ、きちんと終わらせるべきだ。
意を決してブレスに向かいクロードの名を呼ぶ。
だが、何回も呼ぶがクロードの声がしない。
優希の鼓動が激しくなる。通信が切れた・・・?
そう思うと、激しい鼓動と一緒に胸がぎゅっと締め付けられる。
もう二度と聞けない声が、会える可能性も途絶えさせたという意味に思えたからだ。
「馬鹿だ、俺・・・こんなに後悔するなら、もっと早く連絡してれば良かった」
後悔の波が幾度となく押し寄せ、優希は声を漏らし泣く。
「・・・き。ゆ・・・。」
かすかに聞こえるクロードの声にブレスを見ると、目の前に光の塊ができ、横へ広がっていく。鮮明ではないがその中に人影が見えた。
「優希!私が見えるか?」
今度ははっきりと聞こえる声に、涙でぼやける視界の先を見る。
「・・・クロードさん・・・?」
「優希・・・あぁ、優希・・・久しぶり顔が見れたのに、何故、泣いているのだ」
「・・・もう、もう声が聞けないと思って・・・」
震える声でクロードへ向けて言葉を発する。
「優希、この魔法は数分しか持たない。そして、もしかしたらもう、通信が使えないかも知れない。だから、私の話を黙って聞いてくれるか?」
相変わらず優しい声で優希へ言葉をかける。
優希は何度も頷き、涙を拭う。
「あの日はすまなかった。だが、あれは同情とかではない。ただ、本当に守れなかった事を悔やんだ言葉だった。不安にさせてすまない。だが、私ははっきりと誓う。私は優希を愛している。今後もこの気持ちは変わらない。今、優希の姿を見て、その足を見て痛ましいとは思うが、ただ、それだけだ。可哀想とかは思わない。どんな姿でも優希は優希だ。俺の愛した優希に変わりはない。愛している。愛している優希」
優しく微笑みながらそう語るクロードの姿に涙が止まらない。
優希は静かに頷きながら、クロードを見つめる。
「ここの世界で優希を待っている者達は皆、優希を愛している。優希の姿に驚きはするだろうけど、誰も憐れんだりしない。慈しんでるんだ。それを断言できるのは、それだけ優希が皆を愛し、慈しんでくれたからだ。離れなどはしない」
「クロードさん・・・」
そう優希が呼びかけると、目の前の光が歪み始める。
優希はその光景に泣きながら首を振る。
「優希、泣かないでくれ。今、この通信で優希の座標を捉えている。これが最後になるかも知れないが、信じて待っててくれないか?もし、ここに来る覚悟ができたなら、一週間後合図を送る。その光に導かれてくれ」
その言葉を最後に光が小さくなっていく。
消えそうな光の中から愛してるとクロードの声が小さく聞こえた。
優希も慌てて返事をしようとするが、スッと光が消え、辺りは静けさを戻す。
「クロードさん、俺も愛してます」
優希は小さく呟き、体をベットに伏せ泣き明かした。
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