第33話 真相

「貴様!優希に何をした!?」

クロードが荒げた声を上げる。

「く、薬を・・・薬を飲まされたんです・・・」

か細い声に振り向くと、マルクに保護された美久が声をかけてきた。

「あれを飲むと自分の意識がなくなるんです。身体が操られるんです」

震えながらそういった美久にクロードとモーリスが青ざめる。

「そう、これでこいつは完全に我々の物です」

「貴様・・・」

「さて、薬が効き始めるのにもう少し時間がかかるので、他の者に相手をさせましょう」

そう言って男が指を鳴らすと、どこからともなく数人の黒服を着た男達が現れた。

「わざわざ出向かなくても来てくださったので、退屈しないようおもてなしします。これで主人も満足でしょう。一気に邪魔者が消えるのですから」

その言葉にモーリスが眉をピクリと動かす。そして、男に問いかける。

「その主人というのは王妃だな?」

モーリスの言葉にクロードが目を開き、振り返る。

「色々調べているうちに王妃の行動が怪しい事に気づいてな。元々後継者である俺の命を狙っていたのは確実にわかっている」

「ご名答」

男は笑いながら叫ぶ。

「元々、この国を攻め入るのに王子達が邪魔だったのです。迂闊に手を出せば、こちらがやられかねないので、まずは呪いをかける事にしたんですが、呪いをかける際、お二人にかける予定が前王妃が勘付かれ、お二人を庇ったんです。まぁ、結果的には王妃が死んだからいいんですがね、一番の邪魔者がかからなかったことで主人が怒りまして、ならば後釜に座り、王に魔法をかけじわじわと殺す予定に変更したんです」

「母は・・・母は私達を庇って死んだのか?」

「・・・この国を乗っ取るのは何故だ」

「実力があるのに、民の平和だとぬかしてるゆるーい体勢がつまらなかったからです。つまらないこの国を乗っ取り、この世界を乗っ取る予定です」

「つまらない?そんな理由で、母を殺したのか!?」

冷静沈着に話をしていたモーリスが声を荒げる。クロードもギリギリと歯を食いしばり男を睨みつける。

男は笑いながら、優希を横目で見て叫ぶ。

「さぁ、今が絶好の機会だ。お前達、おもてなしを開始しろ。王子様達の相手は俺とこいつがする」


その言葉を合図に男達がマルク達に襲い掛かる。

モーリスとクロードも応戦しながらも優希の元へと近づく。

すると、優希が目を開け立ち上がる。

「優希!」

クロードが声をかけるが、優希の耳には届かない様子でじっとクロード達を見つめていた。

男は優希の縄と首輪をナイフで切り、ニヤニヤと笑いながら、言葉を放った。

「あいつらを殺せ」

その言葉に反応して優希が呪文を唱え始める。優希の周りに突風が吹き荒れ、次第にそれが大きくなる。

「マルク!一旦外に出ろ!巻き込まれるぞ!」

モーリスの言葉にマルクが優希に視線を向けると、その光景に呆気に取られる。

「何をしている!皆を退避させろっ!」

モーリスの言葉に我に帰ったマルクは、部下に退避しろと叫ぶ。

美久はマルクの腕を振り払い叫んだ。

「優希さんを、優希さんを助けてください。優希さんは私を庇って、生きろと、一緒に帰ろうと言ってくれたんです!」

美久の言葉にクロード達は力強く頷き、避難しろと言葉を返す。


「クロード、いいか?怯まずに攻撃するんだ。あいつも俺達に攻撃する事を望んでいないはずだ。多少怪我させようと、あいつの目を覚ませるのが先だ」

モーリスはクロードにそう言うと呪文を唱え始めた。

「わかっている。優希は必ず取り戻す」

そう返事するとクロードも呪文を唱え始めた。

優希の体にまとわり付いた風に、炎が混ざると一気にクロード達へ放たれる。

その瞬間、冷気を纏わせた剣を抜き、その塊に対抗するかのようにクロード達は振りかざす。

それでも塊は消える事なくクロード達へ向かってくる。

2人は何度も呪文を変えながら、剣を振りかざす。

塊の破片がクロードとモーリスの体に傷をつけるが手を止めずに応戦する。

何度か跳ね返している内に、クロードはある事に気づく。

魔法の中に迷いがある事を・・・・。

モーリスもそれを感じ取ったのか、更に力を込めていく。


「クロードさん・・・モーリスさん・・・」

塊の向こうから優希の声が聞こえる。クロードは手を止める事なく優希に声をかける。

「優希、頑張るんだ。私の元へ帰ってこい!」

その声が届いたのか、優希の頬から涙が溢れる。それでも暴走は止まらない。

「何を躊躇っている!?あいつらを殺せ!」

男が優希に向かって叫ぶ。

「嫌だ・・・やりたくない!」

優希の叫び声に、塊とは別の風が巻き起こる。

その衝撃で男もクロード達も弾き飛び、塊が消える。

優希は力なく、その場に座り込む。

「優希!無事か!?」

クロードが剣を支えに立ち上がり、優希に声をかける。

「クロードさん・・・クロードさん」

力無い声で優希はクロードの名を呼ぶ。クロードは急いで優希の元へと駆け寄る。

そして、優希を力強く抱きしめた。

「優希、もう大丈夫だ。よく頑張ってくれた」

優しく声をかけるクロードの背中に手を回し、優希はふふっと笑った。

「おや、まぁ。簡単に始末できると大口を叩いといて、生きてるではないか」

その声に反応して、クロードは剣を持ち、優希を背に立ち上がる。

その声の持ち主にモーリスはボソッと呟く。

「王妃・・・」

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