第30話 真相
今後の作戦をたて、神殿には早速翌日の朝、護衛付きで向かう事になった。
詳しい警備等は王様達に任せ、優希は項垂れているクロードを慰める。
「クロードさん、しっかりして下さい。明日はクロードさんもお供するんですよ?そんなに心配ばかりしていては、俺を守れないじゃないですか」
「わかっているが、不安なのだ」
「そうですね・・・俺も正直不安です。でも、俺はクロードさんとずっと暮らしたい。クロードさんはどうですか?」
優希の問いにクロードは顔を上げ即答する。
「それは私が一番願っていた事だ」
「じゃあ、一緒に前を向きましょう。この先には俺達が幸せそうに笑ってる未来が待っているんです。それを思い描くんです。俺は不安よりそれが楽しみです」
優しく微笑む優希に、涙を浮かべクロードは頷く。その様子を見たモーリスがため息をつく。
「おい、こいつがここまで心を決めたんだ。いつまでメソメソと弱気になっている?お前も気高き皇族の1人だ。強くなれ」
ぶっきらぼうに励ますモーリスにクロードは頷き、背を伸ばすが、ふんっと鼻を鳴らしモーリスは顔を背向ける。
それから1時間程して会議は終わり、それぞれが立ち上がると優希が王の側に行き、真っ直ぐ王の顔を見上げる。
「お前、何のつもりだ!」
慌ててそばに寄るモーリスにも顔を向けず、王を見続けた。
「王様、この件が、呪いの真相が解けたら、クロードさんを認めていただけませんか?」
「何を・・・」
「何も後継者にしろとはいいません。モーリスさんがふさわしい事は、俺もクロードさんも納得してますし、この先もモーリスさんを支持していくつもりです。それとは別に家族としてクロードさんを認めてください」
「・・・・」
「すでにクロードさんとモーリスさんは、互いにわだかまりを払拭しました。あとは王様だけです。今からでも遅くありません。ゆっくりでいいんです。今は新しい家族もできているので難しいと思いますが、王様とモーリスさん、クロードさんの三人の家族という形を再構築すると約束してくれませんか?」
「・・・考えておこう」
「約束ですよ」
優希はニカっと笑い、クルリと回るとクロードの元へ行き、手を取り部屋を出た。
「優希様、王子、迎えの馬車が到着しました」
ウィルの言葉に2人が振り向く。クロードと優希は互いに顔を合わせ頷き、立ち上がる。
玄関に到着すると、ウィルから無事に帰宅するようにと言われ、優希は無言で親指を立てる。その姿にウィルは優しく微笑み、いってらっしゃいませと頭を下げた。
クロード宅から本邸へ向かい、モーリスが乗り込む。
その馬車の後に数名の騎士が馬に乗り付いてくる。
先頭には武装した紺色の髪を靡かせるマルクがいた。
神殿にはヨルが団員達と待機している。
昨日の今日で現れる可能性は低いと思うが、もし狙われるとしたら神殿に行く道中だ。念の為と行きも帰りも万全に対策している。
馬車のカーテンは相変わらず閉じており、優希は隙間から何とか見れないかと目を凝らす。
緊張感のない優希にモーリスはため息を吐くが、何も言わず好きな様にさせていた。そばにいたクロードは、一緒に王都にきた時の事を思い出していた。
あの時の優希のはしゃぎようは凄かった。
街に入ると言われた通りカーテンを閉めるが、時折、少しだけ開いては街の様子を見て喜んでいた。
きっと今もはしゃぎたいのを我慢しているのだろうと思うと、微笑ましかった。
しばらくすると揺れが止まり、馬車のドアが開かれる。
目の前の大きな神殿を目の当たりにした優希は歓喜の声を漏らす。
「やばい。マジでカッコいい。リアル異世界最高!」
「何を意味不明な事を言っているだ?それと・・・その服は何なのだ?」
はしゃいでいる優希に冷たい視線をモーリスが向ける。
優希はよくぞ聞いてくれましたとばかりに、マントを広げ、モーリスの目の前でくるりと回る。
「俺、考案の魔法使いの服です。かっこいいでしょ?」
自慢げに話す優希に、モーリスは口を紡ぐ。
「無言は肯定とみなします。クロードさん、モーリスさんもかっこいいって」
嬉しそうにクロードに飛びかかる。クロードは優希の頭を撫で、良かったなと目尻を下げる。
「俺はかっこいいとは言っていない」
モーリスが取って付けたように呟くが、優希とクロードの耳には届かなかった。
「優希様、お待たせしました」
神官を引き連れ、大司祭が姿を表す。
「さあ、行きましょう。優希様に祈りをしてもらう所は中央広場でなく別室になります」
中に入るようにと促しながら、大司祭が話ながら歩き出す。
その後を優希達がついて行く。
「奥の部屋に最高神官しか入れない神聖な場所があります。神託などもそこで受けます。なので、優希様には1人で入ってもらいます」
「1人で大丈夫なのか?」
クロードがすかさず問うと、大司祭はにこりと笑い応えた。
「その部屋には窓もなく、扉は1つだけです。クロード王子とモーリス王子には扉の前に待機してもらい、念の為、私が内側の扉の前でもう1人の神官と見張ります。その部屋の中央にある像の前には優希様1人で行かねばなりません」
説明を受けながら中央を横切り、奥の部屋へと向かう。
そして、大きな扉の前で足を止めた。
「優希様、ここです・・・」
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