第27話 2人の絆

お披露目の日を明日に迎え、優希は3日と言う速さで仕立てられたクロードに合わせたお揃いの衣装を見ながら、眉をひそめていた。

(忍者は諦めるとしても、絶対、魔法使いの衣装がかっこいいのに・・・)

まだ、諦められない様子でマネキンの様な人形に着せられてる衣装を撫でる。

「優希!」

慌てた様子でクロードが箱を抱えて、部屋に入ってきた。

「クロードさん、どうしたんですか?」

「さっき届いてな。優希にすぐ見せようと持ってきたのだ」

そう言ってテーブルに箱を置き、優希を手招く。

優希がテーブルに近寄ると、椅子に腰を下ろして箱を開けるように促される。

それぞれ二箱ずつ重ねられた箱の上にある箱を開ける。

そこには優希が描いた忍者の服と、魔法使いの服が入っていた。

「これ・・・」

「明日は着れないが、私もこれを着た優希の姿が見たくて、私の割り当て金で注文していたのだ」

優希は箱から見える服を撫でながら、歓喜の目でクロードを見つめる。

「俺、凄い嬉しい!クロードさん、最高!」

「そうか。そんなに嬉しいか。作った甲斐があったな」

クロードも満面の笑みを浮かべて、優希の頭を撫でる。

すると、優希は徐に立ち上がり、ベット脇にあるサイドボックスから小箱を取り出した。

それを大事そうに持ちながら、クロードに差し出す。

受け取った箱にはシルバーと赤色の網紐と、シルバーに模様が入ったバングルが入っていた。

「この前、商人さんが来てた時に頼んだんです。あ、お金は前に売った物のお金をクロードさんが分けてくれたので、それを使いました。勝手にお金使ってません」

親指を立てニカっと笑う。そして自分の腕をクロードに見せると、そこにはお揃いのバングルがあった。

「俺の世界では婚約や結婚する時にリングを交換するんですが、ここでは結婚の時だけと聞いたけど、何か形が欲しいと思って・・・・」

優希はバングルを見つめながら微笑む。

「俺の世界に・・・あっ、日本じゃ無いけどプルメリアって花があって、大切な人の幸せを願うって意味があるんです。小さい頃、世話してくれてお姉さんが、お嫁に行くって孤児院に挨拶に来た時、婚約指輪を見せてくれたんです。その時にプルメリアの模様が刻んであって、それを自慢げに説明してくれたお姉さんの笑顔がすごく印象に残ってて、それで、このバングルにも刻んでもらいました」

「優希・・・」

優希は箱からバングルを取り出し、クロードの手にはめながら言葉を続ける。

「網紐は俺の手作りです。明日はそれを使いましょう。あぁ、良かった。ピッタリだ。これは俺達の絆の誓いです。クロードさんがこうやって、そばにいながら俺の幸せを願ってくれる様に、俺もクロードさんが幸せでいる事をずっと願ってます」

そう言って、クロードの手の隣に自分の手を添えと、2人の腕からキラキラと光が溢れる。

「優希、ありがとう・・・時間が許す限り、私が優希の幸せの為に全力を尽くそう」

「俺も尽くします」

互いに微笑み合い、この先の不安を取り除くようにそっとキスをした・・・。


「優希、大丈夫か?」

心配そうに優希の顔をクロードが覗き込む。

念の為、仮面を付ける事となった優希は、目元の仮面を邪魔そうに触る。

「これが邪魔なんです。急に付ける事になったから俺のサイズに微妙に合わないんです。見辛いったらありゃしない」

ブツブツと文句を言いながら、何度も仮面のずれを治す。

「そ、そうか。足元は見えるか?」

「正直、見づらいです。それよりクロードさんは大丈夫ですか?」

「あ、あぁ。実はさっきから足の震えが止まらないのだ」

クロードの言葉に足元を見ると、確かに生まれたての子鹿の様に震えていた。

優希はクロードの手をぎゅっと握り、大丈夫だと声をかける。

「今日は、危険を避ける為に会場だけでのお披露目です。だから、きっとキラキラ眩しいドレスや服を着た貴族達がいるはずです。眩しいと理由付けて目を細めていればいいんです」

「ふふっ、優希、その貴族が一番面倒なのだぞ?」

「わかってます。本で読んでる貴族は大抵面倒です」

「また、本の話か」

「はい。この本の知識があるから、いろんな対策ができるんです。俺は堂々と出て、必ず炙り出します」

「優希・・・あぁ、そうだな。私もしっかりしなくては・・・」

クロードは自分の足を何度か叩き、自分に気合を入れる。

「クロードさん、手を離さないで下さいね。離したら、俺、この仮面のせいで転けます。それだけは阻止したい」

真面目な顔で話す優希に、クロードは自然と笑みが出る。

それを見た優希は親指を立て、満面の笑みを浮かべた。

大きなドアの向こうから、クロードと優希の名が大きな声で叫ばれる。

「さぁ、戦場へと繰り出しますか・・・」

「ぷっ、戦場とは・・・まぁ、あながち間違ってはいないな。行くぞ、優希」

「はい」

優希はクロードの腕に手を回し、ドアから漏れる眩しい光を受け、その中を堂々と顔を上げ入っていった。

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