第24話 新たな展開
優希の一言に一悶着はあったが、それまでずっと黙っていた大司祭が口を開いた事で、その話は途切れてしまった。
「王様・・・実は、ここ最近、妙な話を耳にしまして・・・」
大司祭は重々しい口調で話始めた。
「密かに闇魔法を研究している団体がいるという話は聞いた事がありますか?」
その言葉に王とモーリスが眉を顰める。
「聞いてはおる。私も呪いがそこから来ているのだと思い、手を尽くして調べたが実態すら掴めなかった」
「そうですか・・・私も、実態は掴めてないのですが、その団体が数年前に召喚の儀を行って、その際に召喚した者を匿っているという噂を聞いたのです」
「何だと!?」
モーリスが声を荒げる。大司祭は優希に視線をむけて話を続ける。
「最初、私はその話を聞いてあり得ないと気にしていなかったのですが、優希様の話を聞いて思い出したのです。もし、それが本当であれば、優希様はその召喚に巻き込まれたのでは無いかと思われます。そして、その召喚の際に、何かの加護を受け、この力を得た・・・そう思うと、全てが結びつくのです」
「なるほど・・・」
優希はそう呟き、頭の中で過去に読んだ本の内容をあれこれ引っ張り出す。
何かヒントがあるかも知れないと思ったからだ。
「ならば、その召喚した者もこれと同等の力を持っていると言うことか?」
モーリスが身を乗り出して訪ねるが、大司祭は黙って首を振る。
「今の所、その兆しは見えません。その団体がうまく隠しているのか、あるいは力がそれほど無いのか・・・もしかしたら、本来は優希様が召喚対象で、その者が巻き添えになったと言う可能性も考えられます」
大司祭の言葉に周りが口を閉ざす。
もし、大司祭の推理が当たっていれば、そいつらは俺を捕まえに来ると言うことか・・・優希はブツブツと呟きながら、しばらく考え込むと、急に顔を上げた。
「王様、俺を囮にしてください」
「優希!何を言っているんだ!」
クロードは優希の肩を掴み、声を荒げる。その手を優しく取ると、ぎゅっと握りクロードを見つめる。
「大丈夫です。危険な事はしません」
そう言いながら微笑み、視線だけを王に向ける。
「表に立つ事はできませんが、俺の存在を公表し、クロードさんの専属護衛だと付け加えてください。その団体の目的はわかりませんが、呪いに無関係だとはいきれません。その渦中に俺も確実に無関係だともいえません。ですから、俺の存在を公表して目的を探るんです。その間、俺はクロードさん宅にいます。専属護衛として・・」
「いいのか?危険が伴うぞ」
モーリスの言葉に優希はニコリと笑みを浮かべる。
「俺の一番の望みはクロードさんの幸せです。大丈夫です。クロードさんは強いし、俺ももっと訓練して強くなります。万が一、俺が命を落とす様な事があれば、クロードさんが悲しみます。それは俺の望みでは無いので、十分に気をつけます」
「優希・・・私も全力で守る」
優希の手を強く握り返し、クロードは力強く言葉にする。王はため息を吐き、今後の作戦はこの場にいる5人で立てて行くと告げ、くれぐれも他に漏れる事がない様にと念押しした。
「これからの訓練は、クロードと鍛錬場に来て行うようにしろ。俺もお前がどの位の腕なのか、確かめる必要があるからな」
モーリスの申し出に優希は頷く。
「もし、この事で王都に、この世界に危険が及ぶ様であれば、俺も戦いに参加します。なので、ビシビシ鍛えてください。正直、クロードさんは俺に甘いので、実践らしい訓練はした事がないんです」
頭を掻きながらモーリスに頼むと、クロードはしょぼくれた顔をして俯く。
その様子を見てモーリスはまたため息を吐く。
「あっ!」
突然の優希の叫び声に皆が振り向くと、優希は親指を立ててニカっと笑う。
「この際だから、俺はクロードさんの専属護衛兼婚約者だと公表してください」
その言葉に、また全員が口を開けて固まるが、クロードだけは顔を赤らめ、俯いていた。
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