第20話 クロードの奇妙な行動
その夜、久しぶりに一緒に寝ようと優希が切り出すと、クロードは顔を赤らめた。
その顔を見て優希は慌てて言葉を付け足す。
「クロードさん、ダメです。俺も恋愛は初心者です。いきなり進むのは絶対ダメです。時間が限られているのはわかりますが、ゆっくりと進みましょう」
無駄に知識がある分、恋人との、男同士の恋愛の先に待っている事柄を察して、クロードを嗜め、その日は手を繋いで寝るだけという事にした。
そもそも、王子の教育を受けていたとはいえ、引きこもりだったクロードにそう言った知識はあるのだろうかと疑問に思った。
仮にあったとしても、それは女性との事柄だ。男同士では勝手が違う。
体格差で言えば、流れ的にどうしても優希が受けだ。
見た事はないが、よく漫画である体の大きな人はアレも大きいはず・・・俺、早まったかな・・・と別の悩みを優希は抱える事となったが、翌日から別の悩みが増える事となる。
「クロードさん・・・何しているんですか?」
今日は魔法の練習日だったが、何故か、クロードがフードを被り、優希と距離を置いて立っていた。
朝からずっとこの調子だ。朝食の場ではフードを被っていなかったが、優希と一定の距離を保ち、目が合うとすぐに逸らす。
逸らしたかと思えば、チラチラと優希を見てくる。
そして、2人きりになった途端、コートを着てフードを頭からかぶり始めた。
優希はクロードの奇妙な行動が理解できず、ため息をつく。
「そんなに離れていては練習ができません。それに、どうしてまた、フードをかぶっているんですか?」
「そ、それは・・・」
ボソボソと小さな声で話すクロードに、優希は近寄りフードを剥ぎ取る。
そして、クロードを睨み付けるとクロードは体を縮こまらせた。
「俺、何かしましたか?寝てる時に蹴ったとか?」
「い、いや、優希はとても寝相がいい」
「じゃあ、何です?今日、起きてからずっとこの調子ですよね?」
「そ、それが・・・朝、目覚めてから隣で寝ている優希を見たら、私のそばにいると言ってくれた事を思い出して、そしたら何故か、優希の顔が恥ずかしくて見れなくなってしまったんだ」
クロードの言葉に乙女かっ!とツッコミたかったが、これはこれで優希を想っているが故の行動だからと内心、ほんの少し喜んでいる自分がいた。
「クロードさん、気持ちはわかりますが、この状態が続くのは時間がもったいないと思いませんか?」
「・・・・?」
「せっかく始めようと決めたんです。俺はまだはっきりと気持ちを伝えてませんが、始めると決めたからにはクロードさんに寄り添い、クロードさんと笑い合い、たまには手を繋いで邸宅内を歩いたり、そうやって恋人としての時間を増やして行きたんです。そうする事で互いの気持ちが繋がると思うんです」
「・・・そうだな。私もこんな事で優希と距離を置きたくない」
「そうです。本来なら付き合いたてはベタベタ寄り添っていちゃいちゃするもんです」
「そ、そうなのか・・・?」
「クロードさんはしたく無いですか?」
「・・・・したい」
「じゃあ、コートを脱いで下さい。恥ずかしくても側に居てください」
「わ、わかった」
優希に言われるがまま、クロードは慌ててコートを脱ぐ。
その姿にクスリッと笑い、クロードの手を取る。
「さぁ、練習しましょう。それで、練習が終わったら今日は一日手を繋いで、慣れる練習をしましょう」
優希のその言葉に、クロードは顔を赤らめながら何度も頷いた。
その日はずっと手繋いで過ごしたが、普段から何かあると優希はクロードの手を握っていたので、特に周りから何も言われる事もなく、ただ、ウィルからは良かったですねと告げられた。
さすが長年の執事だと感心しながら、さすがの優希もウィルの言葉には赤面するのだった。
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