第4話 クロード師匠

その日の夜、頑なに拒否していたクロードを説き伏せ、一緒のベットで寝て貰った。満足げな表情で、クロードの腕にしがみつく。

「はぁー。人の温もり久しぶりだぁ」

すりすりと腕に頬を擦り付ける。クロードは優希の行動に体を強ばらせる。

「クロードさん、無理言ってごめんなさい」

「あ・・ああ」

「クロードさんは本当に優しい。俺、この世界に来て初めて会ったのがクロードさんで良かった」

「・・・優希は私を買い被りすぎだ。私なんかより優しい人はいるし、魔法だってそうだ。私は落ちこぼれだ」

クロードの寂しげな声に優希は体を起こし、クロードの手を取る。

「他の人は知りません。俺は今、目の前にいるクロードさんは凄いと思うし、優しいと思います。例え、今、他の誰かと知り合っても俺の中ではクロードさんが一番最高です」

そう言いながら、白い歯を見せてニカっと笑う。

「・・優希は私のこの髪の色が怖く無いのか?この目の色も・・」

クロードの言葉に、優希はグイッと顔を近づける。その行動に、またもビクッと体を強ばらせる。

「俺はいけてると思います。確かに赤は血とかを連想させるけど、俺の国ではゲン担ぎ色でもあるし、普通におしゃれで髪を赤くしている人もいます。それに、クロードさんの目はビー玉みたいだと言ったでしょ?」

「いけてる・・ゲン担ぎ・・ビー玉・・・」

「ガラスで出来た丸い小さな玉です。クロードさんの目は銀のような色素だから、それが逆にキラキラさせて俺はとても綺麗だと思います。あ、いけてるってのはかっこいいって事で、ゲン担ぎは、うーんといい事がありますようにって願いこめる事かな?」

自分の説明が合っているのか、首を傾げながら答える。

「優希は・・変わっているな。そんな事言われたのは初めてだ」

「そうなんですか?あっ!クロードさん、いつまでここに居れるんですか?」

突然の質問にクロードは言葉を詰まらせる。優希は目をキラキラさせて言葉を続ける。

「もし、すぐ帰らなくちゃいけないとかなければ、俺に魔法を教えてください」

「わ、私がか?」

「はい!師匠になってください!」

「し、師匠・・」

「クロードさんが帰れば、俺はまた1人になります。そしたら、色々また1人でやらなくちゃいけないでしょ?クロードさんが訓練すれば、もっと使えるようになるって言ってくれたし、あと簡単な文字でいいので、教えてください。クロードさんと最初にあった時、言葉が通じるのか不安だったけど、なんか難なく話せてるからそこは問題ないのだけど、文字が読めれば、1人で退屈な時、ここにある本が読めるでしょ?あ、でも、ここにある本て難しいのばかりですか?」

ニコニコ笑顔から、急に眉を顰めて険しい顔をする。優希のコロコロ変わる表情がおかしくてクロードはふっと笑みを溢す。

「あ!笑った!」

優希の言葉にハッと息を止め、顔の表情を無に変える。

「ちぇ。また元に戻った。クロードさん、笑ってる方がいい感じですよ。サイコーにイケメンです」

親指を立ててニカっと笑う。

「い、イケメン・・」

「かっこいいって事です!」

「ま、全くさっきから何を言っているのか・・」

火照る顔を見られたくなくてそっぽを向く。そして言葉をかける。

「まだ、帰る日程は立てていない。だから、決まるまでは色々教えてあげよう」

「やった!クロードさん、マジ、最高!」

「・・・優希の国の言葉は難しいな」

「じゃあ、俺はクロードさんに俺の国の言葉を教えます」

いひっと声を出して笑う。誰かと触れ合って、言葉を交わす・・ただ、それだけの事なのに、優希は心底それが嬉しかった。

楽しくて、楽しくてずっと話していたかった。それをじっと聞いているクロードの気持ちも嬉しかった。心がポカポカと温まって、満ちていく感じがした。

ほぼ一方的に話す優希の話は夜遅くまで続いたが、いつの間にか寝落ちしてしまい、気が付けば朝日が差していた。

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