エピローグ:遠い未来で
高層ビルの一室、窓から広い景色が見られる部屋。
調度品はどれもシンプルで、お掃除ロボのおかげで床はホコリ一つ落ちていない。
「飲み物、持ってきましたよ」
二人掛けのソファに並んで座り、黒い液体の入ったコップを二つ置く。
「これは……コーヒーかい? 錆びちゃわないかな?」
「大丈夫ですよ。それ、オイルですから」
「ハハ……。まさか、そんなものを飲む日が来るなんてな」
となりに座る彼は、苦笑しつつもコップを手に取り、傾けた。
「どうですか?」
「ああ、おいしいよ」
「味覚なんてないのに?」
「キミが淹れてくれたからかな」
「もうっ」
ソファから、窓の外へと視線を向ける。外はもう日が暮れてかなり暗くなっていた。窓に反射した二人の姿が目に映る。青いリボンが頭の上で柔らかく揺れていた。
その視線に気づいた彼、ナカマチ博士は隣に座るボクの手を取った。ボクはもう、ナカマチ博士に触れることができるし、博士はもう人間ではなくなっていた。
それでも変わらないものがここにある。
ボクは自分の身体を少し傾け、博士にそっと寄りかかって微笑んだ。
「博士、これからもずっと一緒ですよね?」
「ああ、もちろんだともNiko」
ボクの隣には博士がいて、博士の隣にはボクがいる。
これから先も、ずっと、ずっと。永遠に。
ボクはAI、人間に恋をした Akitoです。 @Akito_Kosimizu
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