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片腕を失った自機は、別のCES所属機によって後方へと運ばれた。コクピット・シェルから引きずり出された俺は医務官によって屋外ベッドに寝かせられ、要らないと言っているのに大袈裟な治療を受けさせられている。
ふと視線を動かすと、ジャケットの袖を腰に巻いたエディが近づいて来るのが見えた。
「本当に無事なの?」
「まぁ、それなりに」
「ニールセン、左腕が砕けているわ。ここでは直せない。戻るしかない」
「ならそうしよう」
エディの表情が怪訝そうに変わる。
「いいの?報酬は?」
「契約条項
「......分かった。すぐ離脱の手配をするわ」
「CESに連絡を入れる。車載無線機の子機を」
エディがベルトに吊っている子機を受け取る。通常回線でCES本部へ繋ぐと、当直の男性オペレータが反応した。
〈こちらCES本部。回線番号の照会を完了。どうぞ〉
「アルテリア地区で土砂災害の救援に向かった白井だ。作業中に所属不明集団の攻撃を受け、自機の左腕を損壊。ここにある物資では修復できないため、契約条項
〈了解。要請を承認。直ちに損壊した機体とともに帰還し、本部への出頭を命ずる〉
「了解だ。通信終わり」
「なんだ、帰るのか」
初老の男性医務官が聞いてくる。
「機体が壊されてはどうにもならんからな」
「よくあの二機を食い止めてくれた。今頃、我々は死んでいたよ」
「奴らは何者なんだ。ぼろぼろの機体に取って付けたような中古品の武器だ。どこかのテロリストか」
「さあ。
「CASTLEの監査は。これほどの人災が起こるなら、本来は通達や制裁が行われているはずだろう」
「そのはずだが、振興委員会はメガ・ソーラーの開発を強行した。というより、CASTLEも振興委員会の動向を捉え切れていないんだろう」
「そんな。レイヤード・ネストの全インフラに最優先介入権限を持つシステムだぞ」
「考えてみろ。振興委員会の事業所の所在地は?所有する重機の登録は?依頼フォームのアクセス方法は?知ってる人間などいるのか」
「まさか、振興委員会は地下組織だと?」
「それ以外に何がある。動かぬ証拠が揃いすぎだ」
言葉を失った俺に、医務官は耳打ちする。
「お前さん、なにかヤバい事案を取っちまったんじゃないか」
「......」
「まあ、話は終わりだ。検査でも異常なし!それでは、引き続きご武運をお祈りしております!傭兵殿!」
白々しく敬礼をした医務官を横目に、ベッドから立ち上がる。
ふと、作業が続く現場を見る。CES所属機は武装を追加してから作業を再開したようだ。
振興委員会とやらのエゴのために、余りに多くが犠牲となった。無惨に損壊した遺体がこれからも多く出るはずだ。生き残った遺族には消えない傷となり、この地区は悲惨な事故現場として残るだろう。
神は、その独り子をお与えになるほどに世を愛された、という。
もし神が居るというなら、この地区にはいつ独り子が降りられるのだろう。救いが果たされるのはいつになるのだろう。
「機体を積み終わったわ。行きましょう」
エディが促す。
俺は生返事で彼女に従う。
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