第七話 苦笑いのもてなし

「見つけた?」


ポカンとした表情で彼女を見つめる。


「でも、これじゃあ回収が...」


なにか重たい雰囲気を感じ取った僕は、一切彼女に声をかけることができなかった。


彼女はしばらく、考え込むような顔をしたあと、僕の気の抜けた顔をじっと見つめるのだった。


...


「これ、お茶です...」


僕は、なれない感覚で粉末のお茶を提供する。


彼女の侵入を許したことは後悔しているが、なにか、僕の事情についてなにか知っているかもしれない。


「どうもありがとう」


彼女は、なんのためらいもなく、緑茶に手をつける。


「うん、美味しいわ」


「それで、あなたは...」


「ミリアよ、」


「えっ、」


「私の名前よ、どうぞよろしく」


なにか、求めていた返事と違うような気がしたが...まぁいいか。


「えーと...ミリアさん、」


なんとなく名前を呼ぶ。


「この状況は一体、」


いろんな含みを込めた質問をすると、


ミリアさんは、机の上を滑らせながら何かを渡してきた。


「紹介が遅れましたね、私こういうものです」


どうやら名刺かなにかのようだ。


そこには、


「宇宙開発防衛機構...ん?」


そこには、小学生が考えそうな単純で難しい単語が並べられていた。


なんだ、宇宙開発防衛って。


「へ、へェーソウナンデスカ」


僕は一気に集中力が欠かれ、カタコトになっていた。


「よろしく」


ミリアさんは、微笑みながらそう言うと、


「それで、あなたの腕の状態ですけど...」


「は、はいっ!」


いきなり本質をついた質問に、僕の血圧が一気に上昇し、鼓動が早くなっていた。




「寄生されてます、」



「ん?」



そのとき、僕の頭の中でその言葉が何度も繰り返された。



...



その後、ミリアさんから説明を受けたが、内容があまりにも非現実的過ぎて、ことの重大さが分からずにいた。


「要するにあなた達は日々、地球外生命体からの接触を対応していていると。」


「そうよ、」


続けて話を確認する。


「それで今回、地球外生命体?の反応があって来てみたら、こうなっていたと...」


「そのとおりよ、地球外生命体と言っても、あなたが想像する宇宙人だったり、宇宙からの落下物、通称(ストーン)の一部も含まれるわ、」


完全にSF小説みたいだ。


ミリアさんは話を続ける。


「意志や肉体を持っている生命体なら、対話ができたりするんだけど、(ストーン)のような意志や肉体を持たない物体は、それぞれの特性を生かした兵器に加工されたりするの」


ここで、ミリアさんはお茶をすすり間を置いた。


「その腕は本来、兵器としてとても厳重に扱わなければいけない物質なのよ」


「要するに...この腕は隕石のようなものが僕に落下して寄生したものだと、」


「そういうことね」


そんな話聞いたことがない。


「人の上に落ちることも、奇跡なんだけど、本来、それが肉体に触れれば、放射線のように体を蝕んで、死に至るはずなの」


なにそれ、こわっ!宇宙怖い!


「その特性をなくすには、高エネルギーを与えることで、ようやく兵器としての加工が可能になる」



「...あっ」



僕はあることに気づいた。


「さっき外出にいたとき、雷が目の前に落ちたんですけど、」


「...」


彼女は口をぽかんと開け、しばらく一言も発しなかった。



「要するに、雷とストーンが同時に落下して、腕の形に定着したと...」


「そういう、こと?」


僕はスケールの大きさに対し、苦笑いが止まらなくなっていた。












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