第五話 訪問

「なんだ!?」


僕は鏡に写った自分の腕を、警戒しながら見つめ、恐る恐る肉眼で確認した。


「どうなってんだ!?これっ?」


僕は左腕から目が離せない。


その腕は、青く透明ななにかに侵食されていて、骨格、血管が丸見の状態だ。


それに中でなにかにうごめいているようにも見える。


反対の手で触れてみたり、動かしてみたが、何らかわりはない。


ただ、違和感だけが強く残る。


僕は何がなんだかわからず、ただただ腕を見つめていた。




「ピンポーン」


僕はふと、インターホンの音に気づく。


しかし今は非常事態。


とてもじゃないが、出れそうにないな。


こんな正気じゃない状態で出れば、相手を困惑させるだろう。


すまないが、居留守をするしかないな。


「ピンポーン」



「ピンポーン」


「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」


「なんか、しつこいな...」


逆に困惑し始める僕は、鳴り止まないインターホンに対して、申し訳なく思いながら居留守を続けた。


「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」


次第に音の感覚が短くなる。


いままで、これほどインターホンの音を聞いたことがない。


もしかして、なにか重要なことが起きているのかも、


そう思った僕は、バスタオルで体を軽く拭き、厚手のパーカを腕が見えないように着込んだ。


ま、まぁ、腕が変なだけだから、特に問題ない...よね?


「すっ、すみませーん」


僕は申し訳無さそうに、玄関に向かって声を発する。


「こちらこそ、何回もすみませーん」


意外と普通の返事が返ってきた。


「お聞きしたいことがあるんですー」


宗教勧誘か何かだろうか?


とても物腰が柔らかい。


不気味なほどに。


僕は、「なんとかなるだろ」と楽観視していた。


扉をゆっくり開け、頭ニ個分の隙間から外を覗き込む。


そこには、肌が透き通るほど白く、髪までもが純白の、可憐な女性が立っていた。


年齢は僕と同じぐらいだろうか?


なんだか、不思議な人だな。


「すみません、ちょっとバタバタしてて」


「いえー全然」


その女性は、明るい声色で笑顔でこちらを見ながら会釈をする。


「それで...ご要件は?」


僕は平然を装いながら話を次へと進めた。


ま、まぁ、しっかりと腕を隠しているから、大丈夫なはず、


「じー」


その女性は、僕の上半身あたりを見つめ始めた。


「あ、あのー」


汗が止まらなくなる。


緊張で声がうまく出せない状態で、微かに脚を震わせていた。


「なにもないなら、僕これで..」


話を切り上げようとしたとき、





「すみませんが、左腕を見せていただけますか?」


「へっ!?」


僕は、カウンターを食らったかのように、頭が真っ白になっていた。






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