第八話 僕と彼女と幼馴染と電マⅡ
「キャァァァ!?」
僕の股間に張られたテントを見て玉石さんが悲鳴をあげ、手から電マを落としてしまう。茉莉がその電マを空中でキャッチした。
「成敗」
そしてあろうことか、振動する電マで僕の股間を攻撃してきた!
僕の股間にそびえ立つ聖剣サカイは電マの攻撃を華麗に受け流したが、それがまずい結果を招いてしまう。電マの軌道はそのまま下方へと逸れて、二つの宝玉に直撃してしまったのだ。
「ひぎぃぃぃぃぃ!?」
あまりの激痛と衝撃により僕は立っていられなくなり、股間を押さえてそのまま膝から崩れ落ちてしまう。
「な、何するのさ茉莉!?」
涙目で抗議してみるが、返ってきたのは冷たい視線と言葉だった。
「それはこっちの台詞、変質者」
茉莉は僕を睨みつけながら、電マで執拗に僕の股間を攻撃しようとしてくる。僕は涙目になりながら、必死に両手で股間を庇った。
「勘弁して茉莉! まずいって! 子孫残せなくなっちゃうよォォォッッッ!」
「変質者の遺伝子はここで断った方が世の為」
僕の鬼畜姉の影響なのか、茉莉は僕に対して加減というものを知らない。このままでは本当に大変なことになる。
というか、両手越しの振動が気持ちいいせいなのか、茉莉に攻められてることに興奮しているからなのか、理由は定かではないが股間はまた別の意味で大変なことになっている。
これもある意味、宇宙的快楽の一種のような気もするけど……って、まずい! このままでは名実ともに変態になってしまうじゃないか! どうにかこの状況から抜け出さないと!
「た、助けて玉石さん!」
僕は藁にもすがる思いで玉石さんに助けを求めた。
「嫌よ。あ、そのマッサージ器もう使えないから、坂井くんにあげるわね」
玉石さんはこちらに
「いろんな意味でヒドイよ玉石さん!?」
「いろんな意味でヒドイのは坂井くんの方だと思うけど?」
それを言われてしまうと、女子相手に股間のテントを見せつけてしまったという事実がある以上、僕には何も言い返せなかった。
こうなったらもう、謝り倒すしかない!
「ふ、二人とも! ぼ、僕が悪かったよ! ごめんなさい! 何でもするから許して!」
「何でも?」
何でもという言葉に反応し、茉莉が電マのスイッチをオフにした。
と、とりあえずは助かった……のだろうか?
「何でもっていうのは、どこまでの範囲?」
茉莉が真剣な眼差しで問いかけてきて、僕は思わず気圧されてしまう。
「ぼ、僕にできる範囲でなら」
「……そう。わかった、許す。何をやってもらうかは、考えておく」
どうにか茉莉からは許しを得られたようだ。
あとは玉石さんだけど……。
「坂井くんにできる範囲で、何でもね……そうね、じゃあ、わたしからは……」
玉石さんは僕の顔をちらりと見て、少し考える素振りを見せる。
「わたしね、新しい部活を作りたいの。もし部活ができたら、部室はここを使っていいっていうのは先生から既に許可を得てるんだけど、肝心の部員集めがまだなのよね」
「僕に部員集めをしろってこと?」
「そうね。元々今日はそれをお願いするつもりだったの。ああ、もちろんあなたも入部するのよ。たしか坂井くんって部活入ってないわよね?」
「うん」
「じゃあ、わたしとあなたで二人だから、部を作るためにはあと最低でも三人ね。ねぇ、七瀬さんはどう? 一緒に部活しない? 七瀬さんもたしか帰宅部よねっ?」
玉石さんがにこやかに茉莉に語りかける。なんだろう、僕への対応と温度差があるのは気のせいだろうか。
「部活って……そもそも何の部活なの?」
これは当然の疑問だろう。何の部活かわからないのでは返答のしようがない。僕は「何でもするから」と言ってしまった手前、よく聞きもせずに二つ返事してしまったが……。
「そうね……その質問に答えるためには、わたしからも質問をしなくてはいけないわ。七瀬さんは宇宙を感じたことはあるかしら?」
うわ、何を言い出すんだこの人は。ほら、茉莉がポカーンとしてるじゃないか。
「宇宙……?」
「これをしたら、すっごく気持ちいい! もう宇宙感じちゃう! そんな風になるものって、七瀬さんにはある?」
「うーん……」
茉莉が口元に人差し指を当てて、考え込む。
いやいや、こんなくだらない質問に対して、そんなに真剣に考えなくてもいいんだよ、茉莉……。
「あ」
何か思い浮かんだらしく、手をポンと叩く。
「格ゲーで劣勢から一気に逆転したときとか、気持ちいいかな」
「かくげー?」
玉石さんはゲームに疎いようで、何のことかとキョトンとしている。
「格闘ゲームのことだよ。テレビゲーム、玉石さんはやったことない?」
僕が補足して、ついでに質問してみた。
「ないわ。うち、親がそういうのに厳しい人だから。でも、格ゲー? それって気持ちいいものなのね? だとしたら、わたしも興味あるわ。わたしはね、色々な人が感じる、色々な気持ちいいことを知りたいの!」
なんとなくだけど、玉石さんの言わんとしていることがわかったような気がする。
「つまり、何でもいいから気持ちいいことを探す部活ってことかな?」
「そう、名付けて宇宙探求部よ!」
玉石さんは誇らしげに言ってのけるが、それって部活として認められるのだろうか……。
「この学校って比較的自由な校風だとは思うけど、それって部活として認可されるのかな……?」
僕は思ったことをそのまま疑問として投げかけてみたが、玉石さんは心配ご無用と言わんばかりにニッコリと微笑んだ。
「表向きは宇宙のことを勉強する部活として設立するから大丈夫よ。
たしかに、優等生として通っている玉石さんがそう言えば先生たちも納得するだろう。
「流石だね、玉石さん……抜かりがないと言うか抜け目がないと言うか……。茉莉はどう? やる?」
「うーん……」
茉莉がまた口元に人差し指を当てる。これは何か考え込むときの茉莉の癖だ。
「部室にはパソコンも置く予定だから、ゲームもできるわよ、七瀬さん」
「じゃあ入る」
即答だった。
茉莉、どんだけゲームが好きなんだ……。
「やった! じゃあ、あと二人ね! 坂井くん、メンバー集めお願いね! 期待してるわよ!」
「うん、やれるだけやってみるよ」
こうして僕たちは、玉石さんが設立した宇宙探求部の一員となったのだった。
茉莉を玉石さんの宇宙に巻き込んでしまって申し訳ないような気もするが、これから三人で一緒に部活ができると思うと、僕は何だか楽しみな気持ちでいっぱいになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます