誰かが言った。神は死んだと


俺は村の端にある木の側で

寝っ転がっていた。

そしてさっきのことを思い出す。

いやー。やらかした。

さっきは止まらなかったけど

あれ絶対に嫌われたよな。ん?そういえば

あの時何でマリーは俺と話そうとしたんだ?

俺と今までは話そうとしなかったのに

あの時だけやたら話したがってた……よな?


「フレイじゃないか!

 どうしてここにいるんだい?」


俺はセラに話しかけられた。

セラもここに来ていたのか。


「俺は、マリーに酷いことをしたから、

 頭を少し冷やそうと思って。

 セラこそ何でここにいるんだ?」


「フレイがここにいる

 気がしたっていうのは、

 駄目かい?」


セラはそう冗談?を言った。

ご丁寧に上目遣いもセットだったりする。

そんなことあり得ないと思うけど、

セラがそう言うならそういうことにしよう。


「いや、別に駄目じゃないけど、

 よく分かるな」


「まあね。私は昔から勘が鋭いから、

 フレイのある場所もなんとなく分かるよ。

 そういえば、

 マリーに酷いことをしたって言ったね?

 何かあったのかな?」


そこを聞いてくるか。

あまり触れてほしくないけど、

セラも関わってくる話だしな。

ここでセラに伝えておくか。


「俺はセラに1人で

 ついて行くって決めたんだ。

 それを伝えたら、

 引き止められたけど無視した」


今思い返したら本当に酷いな。

やっぱり後で謝っといた方がいいかな。

そう考えながらセラの方を見ると

笑っていた気がした

けど、すぐいつもの顔になって

こっちを見てくる。


「どうしたのかな?もしかして、

 私に見惚れたかい?

 まぁ、冗談は一旦置いておいてフレイは

 何も間違ってないよ。私と旅をして、

 またいつか帰ってくればいい」


「そうかな?」


「大丈夫。なんなら今から村を出る?

 私はいつでもいいよ?」


「いや、それは待ってくれ。

 前にセラが言ってただろ?

 魔力は使えるようになっておきたい」


「……そう。それなら成人の儀まで昼寝でも

 しようか。一旦休んで落ち着くといい」


そう言われて俺は寝ることにした。

確かにこの3日間で疲れが

溜まってるかもしれないし、

起きてたとしてもすることもないからな。


「じゃあ、俺はゆっくりしようかな」


――――――――――――――――――――


「う、うん?」


俺は、昼寝をしてて、今何……時……

俺は目を開くと冷や汗をかく。

空が赤い。これってもしかして、


「フレイ、おはよう」


セラは俺が起きたことに気づいたようで、

挨拶をしてくる。けど、そんな場合じゃない。

俺は恐る恐るセラに聞いた。


「セラ?今、何時?」


「6時20分だよ」


不味い不味い不味い!あと10分で始まる。

俺は急いで走り出す。

本当は何で起こしてくれなかったのか

聞きたい気持ちでいっぱいだったが

それをする時間ももったいない。

俺は成人の儀する教会まで急ぐ。


「フレイのやつまた寝坊したのか?」

「あいつ今日も相変わらずだな」

「どうしてあの2人からあんな子が

 産まれてきたのかしら?」


道端から俺を笑っている声が聞こえてくる。

本当に俺今日は寝坊してないからな?

遅刻と寝坊は違うから、

そこは知っといてくれ。


「はあ、はあ、はあ」


やっと、教会が、見えた。

大丈、夫、まだ時間は、ある。


俺は教会に駆け込もうとしたとき、

マリーの声が聞こえて来た。


「兄さん!

 私、昔一緒に遊んだ山で待ってる!」


え?


――――――――――――――――――――


よく分からない言葉を神官の人が言ってる。

あれ意味分かってる人いるの?

しかも手元でも何かやっている。

当然これも分からない。


「ヤンクは前へ」


神官の人がヤンクを呼んだ。

ちゃんと俺に伝わる言葉を使ってくれて嬉しい。

……と思ったら、ヤンクは手を合わせた。

もしかして俺も何かやる感じ?


ヤンクは満面の笑みで教会を出て行った。

あの様子だと良い才能でももらったのか?


「フレイは前へ」


あ、やばい。何も分からん。

何をすればいい?

ヤンクは手を合わせていたけど、

別にそんなことをしていない人もいた。

つまりあれは自分で

考えたことをやるということ。

なら、俺ができることは……


俺はひざまづいて手を合わせて祈る。


俺は別に神を信仰してる訳じゃない。

でも、もし神が本当にいるのなら、

俺に誰かを守るための力を下さい。

俺は今まで自分のやり方で

マリーを守ってきた。

本当にあれが守るってことかも

分からないし、

ただ迷惑だと思われていただけかも

知れない。

歪んでいるって言われるだろうが、

それでもいい。

俺は俺の大切な人達を守りたい。


俺が神に祈っている内に

自分が何かに包まれる。

ああ、これが魔力か。真っ黒だし闇属性か。

それに、何か手に乗っている気がする。

俺は何かを貰えたのだろうか?


俺が目を開けると、

そこには立派なペンがあった。

……は?

心の声が漏れてしまいそうになるのを

俺は全力で抑えて教会を出る。


「やっぱ神って信じられないわ」


俺が期待し過ぎたのが悪いかもしれないけど、

それでもペンはさすがに……ねえ……

すっかり気落ちして帰ろうとしたが、

マリーが山で待っていることを思い出すと

山に向かって走っていった。

ちなみに、

このペンはどっかに消せるみたいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る