決断

三話

どうしてこんなに

重い空気になってしまったんだ?

俺はこんな空気にしたくて

言ったんじゃないんだ。


「まあ良いよ。私はしばらく待つから2人で

 話し合ってみるといいよ。もちろん、

 私はフレイだけでも歓迎するからマリーが

 ついてこなくても構わないよ。 

 期限は、そうだね。

 フレイ、成人の儀はいつだい?

 私の記憶が正しければ3日後だけど」


「合ってるぞ。後3日で俺は成人する」


「じゃあ3日後を期限にしよう。そうすれば 

 フレイがついてくる時魔力があるからね。

 すぐ行くより安全だ」


俺達は成人の儀の時に

人生が一気に変わることがある。

その理由は魔力等が

使えるようになるからだ。

人は成人の儀で力を授かる。

魔力をはじめとして、才能が伸びたり、

たまに何かものがもらえることも

あるらしい。

確かに魔力がない今のままセラに

2人でついて行こうとしたのは

さすがに駄目だった。


そんなことより、

後3日で俺はどうするか決めないと。

俺としては、

マリーも一緒に連れて行きたい。

父さんも母さんも仕事で家にはたまに

帰ってくるぐらいだ。

ヤンクがこの村にいるのにおいていくのは

少し抵抗がある。


……でもマリーは行きたくなさそうだった。

あそこで何回も言い返してくるのは

そういうことだ。

だとしたら俺1人でセラに

ついて行くのがいいのか?

ちゃんと考えればヤンクだって

多少危ないような気もするけど、

犯罪にまでする気はないはず。

それならマリーが

この村に住むことになっても……

とにかく、マリーと話さないと

何も分かんない。

今日の様子だと上手く話せないと思うけど、

3日あるし、諦めずに話しかければいけるか?


「なあ、マリー」


「すみません。私少し休ませてください」


そう言ってマリーは階段を上がっていく。

駄目だ。ここで止まったらもう手遅れになる。


「少しだけ待ってくれないか?

 俺はマリーと話したいんだ」


「それなら言っておきます。

 私がこの村を離れる気はありません」


そう言って今度こそマリーは

階段を上がって行った。

俺は呆気に取られてしまった。

まさか話しすら出来ないとは

思ってなかった。

どんな結果になっても話し合った結果で

皆納得して終わると思ってた。

だけど、こんなことになるとは……


俺は諦めたくなくて話しかけ続けたけど、

答えてもらえるのは

いつもの日常的なことだけで、

村を出ることでは一切話してくれなかった。


――――――――――――――――――――


期日当日の朝―


俺はいつもより早く起きた。

もう、成人の儀の日だ。間に合わなかった。

俺はこのまま終わるのか?

せめてマリーの話だけでも聞きたいけど……

もう駄目だろう。


俺は階段を降りると父さんと母さんがいた。

2人はこっちを二度見すると、声を上げた。


「おい、

 フレイお前起きれるようになったのか?

 父さんもうお前はあのままなんだと……」


「いや、俺は

 「フレイ〜!あなたなら出来るって

 私は信じてたわよ〜」


母さんが俺の頭を撫でてきた。

そう。俺達は両親に溺愛されていたりする。

普通は寝坊しないだけで

こうはならないだろう。


「いや、父さんも母さんも違うんだ。

 俺がいつもより早く起きれたのは

 理由があって、

 (一回、相談してみようかな?)

 俺、悩んでることがあるんだ」


「へぇ、フレイも悩み事をする歳なのね。

 それで?何があったの?」


「俺、村を出ようか迷ってるんだけど、

 マリーと話したいけど、

 聞いてもらえなくて……」


「別にいいんじゃないか?」


「え?」


「私達だって昔はそうだったのよ。

 お互い納得出来なくて、

 意地を張ってたことがあるの。

 まぁ、私から言わせてもらうなら全部納得

 なんてことはないんだから、たまには

 周りのことなんて考えずに

 やっちゃいなさい」


「そうだな。フレイ?別に村を出てってから

 もう帰らないって訳じゃないんだろ?」


「まあ……」


「それならいいじゃないか。何かあっても、

 またマリーに会いたくなったら

 帰ってくればいい」


そうか、そんな簡単なことなのか。

実際上手くいくなんてことはないだろうけど、

そんなこと気にしてたら何も出来ないもんな。


「ありがとう。俺、決めたよ」


「そう。それならマリーに

 一方的に言っちゃうか

 どうかしたらいいわ。

 マリーは聞いてくれないんでしょ?」


「そうだね。

 じゃあマリーが起きたら言うよ」


「あっでも成人の儀が終わったらどれだけ

 気まずくても家に帰ってきてよ?

 私達だってたまには家族と話したいから」


「分かった」


「それなら、父さん達は一旦家から出るよ。

 多分2人の方がいいだろ?」


「うん、ありがとう」


そう言うと、父さんと母さんは出ていった。

本当に俺はあの2人を両親に持って幸せだ。

……足音が聞こえてきた。マリーか。

それじゃあ覚悟決めるか。

ああは言ったものの、

やっぱ嫌われると思うと抵抗がある。


「……?兄さん?!何で?」


まあ、そうなるよな。


「マリー。話がある」


少し慌てていたマリーは俺の発言を聞いて

静かになった。


「何ですか?私は話し合いはしません。

 別の話ならそう言ってください」


マリーはすぐに家から出て行こうとするが、

ここで終わらせる。


「俺、セラについてくことにした」


「……え?」


マリーはまた動揺しているみたいだ。

思った反応とはちがう。けどこれでいい。


「それじゃあ」


俺は家から出て行く。


「兄さん、待って!ちゃんと話して!」


何を言ってるんだ?

今まで話そうとしなかったのは

マリーなのに。

俺は足を止めずに歩いていく。

これから成人の儀までどこにいようか。

成人の儀は夕方に行われる。

それに対して今はまだ朝。もしかして

言うタイミング間違えたかな?


そうして路地に残っていたのは

マリーだけだった。

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