第14話 月夜の愁い
天狗とは、慢心に手足が生えたような化け物のことである。自分の実力を過信して、相手を見下し
現代に転生する直前、私は
◇
モノクローム。緋出は意識を取り戻した。
天井。自分は今どこにいるのだろう?
ひんやりとしていて堅い。寝台の上だ。
己の顔を若い男が覗き込んでいる。彼にここまで運び込まれたのだろうか。
「お目覚めかな。杖の法師」
自分のことを知っている。緋出は身の危険を感じて飛び起きようとするも、体に力が入らず、どうしようもなかった。
「自己紹介しとこうか。俺は
岸丸はそう言って部屋の隅を指差した。そこには一面の琵琶が立てかけられていた。
「こいつで呼べるのは音の妖怪。お前とツレの妖怪がピンチみたいだったから、
佐野の話によれば、法師は自分を除いて五人いるはずである。この男は緋出にとって味方にあたるらしい。
「痛むか?」
「いえ、ちょっとしびれてるだけで、あとはなんともないです」
緋出は自分の首を精一杯動かして、周囲を見回した。茜はどこにもいない。
「ちょっと胸の辺りをやられてたな。
「どうもありがとうございます。
「お前の懐の中で眠ってるよ。心配だから付き添ってるつもりなんだろな」
緋出は自分の胸元を探り、鞘に納められた小刀があるのに気づいた。冷たいはずの刀身が、どこか暖かい。
「残念だがお前の杖は取られちまった。回収する気はあるか?実は、俺は
緋出は愕然とした。しかし諦めと安堵をも覚えていた。これ以上はどうせ、一学生たる自分の出る幕ではない。杖は取られてしまったのだから、もう狙われることはない。逢魔座を追及することはやめにして、後は
「もう、これで十分です。警察に情報提供して逢魔座が摘発されるのを待ちますので。僕はこれで妖怪事件から手を引きます」
「それはできない相談だな」
「え?」
「お前は
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