第11話 窓辺の女
「そうそう、
中央区とは
「
「そこで夜な夜な、動物がキャトられてるそうなんだ。先週はヤマアラシのスパァキィくんが被害に遭ったんだと」
「きゃと……。何?」
「キャトルミューティレーション!家畜が死体の状態で発見されて、調べてみたら血や内臓がすっかり無くなってたっていう怪奇現象のことだ」
「じゃあスパァキィくんはご臨終……」
「いやいや、危ない所を警備員が駆けつけてきたものだから、犯人は逃げていったって話だ。結構な量の血を吸われてたもんだから、動物病院で目下療養中」
「ふーん」
先日の
「犯人は大きな黒い塊に見えた、とは警備員の談だ。俺はチュパカブラ説を
「チュパカブラ、あーあれね。ガリガリの小型吸血鬼」
「そうそれだ!実は他にも証拠があって……」
こうなるとキリがない。響太のオカルト
「あーわかったわかった。
「まーた急に切り上げる。お前は臆病者だからなぁ。今夜お前ん家に泊まりに行ってやろうか?今日は母さん出張だろ。家に一人っきりじゃ怖くて眠れないんじゃ……」
「ならん!」
緋出はがばと
「学校終わったよ!」
緋出がドアを開けると、牛王坊は窓を背にして立っていた。そして窓の外には―女がいた。古風な白ずくめの服。長く伸ばした黒髪。それが何かもごもごと口を動かして、右手を
パキッ!!!
耳をつんざくような音を伴って、ガラスは砕け散り、周囲には破片が散乱した。
「やっと会えたね」
「うわああああああ!」
緋出はその場に倒れ込んだ。
「緋出殿、お気を確かに!」
牛王坊の声に緋出は目を覚ました。
「ごめんね、驚いちゃった?」
よく見れば、窓から侵入してきた女は先日のツルギミサキである。おそらく
「この
「えへへへ。入り方分かんなかったの」
「はぁ、はぁ。びっくりした。どうして僕らの居場所が分かったの?」
「んーとね。この辺りをぶらぶらしてたら、カラスの群れがゴミを漁ってたの。その中にどこかで見たことのある目つきのカラスがいてね、それがこいつ」
ツルギミサキはそう言って、牛王坊を指さした。
「牛王坊、まさかとは思うけど、本当?」
「いやはや、実を申し上げますと、その通りでございます」
牛王坊は恥ずかしそうにうなだれて、羽根をすぼめて小さくなっている。
「私はこの通り浅ましい
牛王坊にも人知れぬ悩みがあるらしい。人間からすればたまったものではないが。
「ところで、殿はどういうご用件で?」
「ああ。中央区に妖怪がいるかもしれないから、今夜行ってみようと思うんだ」
「噂に聞く大都会でございますね。かしこまりました。この牛王坊、お供いたします」
「悪いんだけど、今日は僕だけで行くつもりなんだ。お前がカラスに化けたとしても、未成年にはペット所持が禁止されてるから」
「しかし。殿お一人では……」
「じゃあ私がついてく!殿に呼び出されてから町並みがすっかり変っちゃって、
「それはなりませぬ。だいいちこの時間帯に、若い男女だけで外を出歩くというのは、何でしたろうか―そう、不純異性交遊にあたるのではありませんか?」
「バレなきゃいいんでしょ?見つかりそうになったらこうだよ」
そう言ってツルギミサキは、小刀へと変化してみせた。妖怪の体とはつくづく、便利なものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます