第5話 憑かれた男
はい。ええ、ええ、そうですとも。私がやりました。どうしてって?それはね、あの
散歩してる時に会ったんです。私の飼ってるサモエド犬が、彼女のお気に召したみたいで。昔はともかくとして、今飼育免許が要るでしょ、生身のペットは。子供には飼えないんだ。だからうちの
あと、出身が同じ三重だったんです。ちょうど彼女が生まれたくらいの時ですよねえ、「カドゥルー事件」のあったのは。例の、カルト団体が起こした放射能汚染事件。私は中三だったかな。それで近畿の人はほとんど岡山県に移住して、すぐに名前が
二年前のこと?あの日はすごい土砂降りでしたねえ。翌日
ところで、『
これって犯罪になりますか?なりませんよね。妖怪に人権なんてありませんから。せいぜい動物愛護法に引っかかるかどうかでしょう。妖怪って、いいですよねえ。
正月明け、仕事で岩手に出張することになって、地元の民宿に泊まったんです。女の子の
彼に会ったのはその時です。おかみさんと話してたら、本物の座敷童を見せてあげますよって。妙に芝居がかった話し振りの男の子で、あの娘と同じくらいの歳に見えました。名前?忘れました。でも「
それはもう、たっくさん可愛がってあげましたよ。和服だってお洋服だってなんでも買ったげました。でも、一週間くらいしたらいなくなっちゃったんです。
しばらくして、例のこましゃくれた男の子が、また訪ねてきたんです。今度はスーツ姿の大男も一緒でしたね。そいつすごい毛深くて、色黒で、ゴリラみたいでしたよ。私の一挙一動に目を光らせてるようで、気味が悪かったです。私の考えを読んでるんじゃないかって、そんな気にさえなりました。そいつが男の子になにやら耳打ちすると、大男の背後からひょっこりとね、女の子が出てきたんです。
名前は知りません。怪談と妖怪って、あくまで接してるってだけで、本来別々の領分じゃないですか。だから妖怪のことはよく分かりません。
妙に肌が赤くて耳が長いことを除けば、人間の女の子とあまり変わりませんでした。さらっとした黒髪が地面に届きそうなほど伸びてて、ちょっと
そしたらね、なぜだか急に
あの娘、二年前とほとんど変わってなかったんです。ずっと地面の下にいたというのにね。再会した時は、とっても嬉しかった。手の甲にキスをして、抱きしめてうんと息を吸い込んで。うふふふ。私の好物、熟成肉なんですよ。
丑三つ時だっていうのに、どうしてサイレンが鳴り響いてるんだろうって、気付いた時にはもう遅かったんです。でも後悔はしてませんよ。綺麗なあの娘に
ところで、刑務所の敷地内にお墓ってあるんですかね?どうしてそんなことを聞くんだって?それはもちろん、お墓参りのためですよ。誰のために?誰でもいいじゃないですか。ねえ、教えてくださいよ。ねえねえねえ。
◇
【女児誘拐殺人・死体損壊の容疑で27歳の会社員を逮捕】
朝っぱらから
緋出にとって、妖怪はもはや現実のものとなっている。妖怪の存在が明るみになった時、この国は一体どうなるというのだろう。言い知れぬ不安を覚えつつ、彼はディスプレイを閉じた。さあ朝食だ。今日は、ハムじゃなかったらいいな。
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