第4話 霧中の怪②
新たな主人に連れられて、私―
私は今、
ピピッ。
「ハイハイ、今から視覚共有しますからね。整理士さん、ここが例の書斎です」
いたるところモノで溢れかえってはいるものの、書物の類はあまり見られない。納戸の間違いではないのか。それにしても彼女は右目を光らせながら、部屋のあちこちを物色し、誰かに向かって話しかけている。妖術使いか、はたまた
「はぁ。高いんですかこれが。隣のやつも?あれもレアものなんですか!すごいすごい!」
部屋のモノを値踏みしているらしい。収蔵物の
「ええっと……それからこの木箱の中身も鑑定していただけますか?」
御母堂が、私のすぐ傍に立てかけてある木箱に近寄ると、怪しげな目の光が消えた。
「あれれ。すみません。通信状況が良くないみたいで……。ちょっと出直してきますね」
御母堂は納戸を出た。彼女はこの部屋の物を誰かに売り渡す予定なのだろうか。木箱に入ったあの杖は、私を現世に呼び戻すという、
◇
「兄ちゃんや。助けてほしくば杖をくれ」
こいつは妖怪だ。僕というよりむしろ、百鬼杖を狙っているのだ。あの杖は本物の兵器なのだと、緋出は確信した。
「……」
一歩後ずさり、振り返る。
「無駄じゃて。逃げられやせんよ」
「お前は、何者なんだ……?」
「ワシは
「おうまざ?」
「知らんのか。逢魔座ちゅうのはな、化け物、いや人間どもは妖怪と呼ぶんかの。妖怪同士互いに助け合って、人間に対抗するための組合じゃよ」
どうやら妖怪は、一組織を結成できるほどの数がいるらしい。それは即ちこの世には、百鬼杖のような道具が複数存在することを示唆している。
「悪いようにはせんからの。兄ちゃんの
どうしようどうしよう。頭が真っ白になったその時、
「わはははははは」
一陣の突風とともに、
「お主も化け物か。私は最強の
「自分から名乗り出るとは、
「ふ―む。見かけない化け物だな。我ら天狗族と違って、さぞかし無名なのであろうなあ」
牛王坊は
「この野郎!道迷わしの名手、
老爺は目を三角にして怒鳴る。
「
牛王坊が
「ひ、火、火はやめてくれ!
「火を恐るるは獣の
牛王坊は腰の
「……ありがとう、牛王坊」
「
「杖を狙ってるみたいだった。逢魔座のよこした化け物だとか」
「逢魔座……?
牛王坊は一瞬眉をひそめ、書斎から持ち出してきたのか、懐から杖を取り出した。そして息を大きく吸い込んで言った。
「緋出殿、無礼を承知で忠言いたします。この杖は必ずや災いの種となりましょう。そして御母堂は、御父君
緋出は一瞬ためらったような顔をしたが、すぐに頬を引き締めて真剣な表情になった。
「僕がこの杖を持ち続けることが、父さんの願いなんだと思う。その真意が分かるまでは、これを手放したくないんだ」
「それでは、お
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます