第5話霊能力者の真実
死体発見場の一体は、警察車輌と報道陣でごった返していた。
「あっ、黒井川さん」
そう、呼ぶとこの川崎巡査は黒井川に捜査状況を述べた。
「死体で発見されたのは、宮川琴美39歳。死因は後頭部を数回殴れた事による脳挫傷」
黒井川は、
「あの、霊能力者の藤崎さんが霊視した通りの格好だね。スゴい能力だ」
川崎は続けた。
「宮川さんの旦那さんから、捜索願いが出されたのが昨日なんです。夜から料理教室の時刻になっても現れないので、旦那さんが警察に……」
黒井川は死体のピアスを確認した。
「……ねぇ、殺された宮川さんと藤崎さんの関係洗ってみてよ。僕はスタジオに戻る。あと、鑑識にこれを依頼して」
「警察犬ですか?」
「うん。そう」
「今回の事件は初めての経験でして、私は宮川さんを殺したのは十中八九、藤崎美和だと確信しています。彼女も言ってました、宮川を殴ったのは女だと。ここに藤崎美和がいた証拠さえ見つかればこっちのものです」
藤崎美和は控え室で着替えていた。そして、部屋を出ようとすると、何者かがノックした。
「どうぞ」
と、藤崎は男を招き入れた。
「愛知県警の黒井川と申します。今回は、非常に稀なケースでして、一応、死体の第一発見者の藤崎さんに2、3お聞きしてよろしいでしょうか?」
黒井川は、バッジを見せてパイプ椅子に座った。
「あの、私は霊能力を疑っているわけではありませんが、どのように頭に死体が浮き上がるのですか?」
「刑事さん」
「黒井川で結構です」
「黒井川さん。夢を見ますか?」
「夢?はい、見ます」
「そう、夢の様に頭に浮かびあがるのです」
「大した能力です。ずっと側にいて見てきたように、死体の様子を言い当てましたね?」
「黒井川さん、ちょっと心外です」
藤崎は、じっと黒井川を見据える。
黒井川のスマホが鳴った。
「藤崎さん。ちょっと失礼します。もしもし、私だ。……うんうん分かった。ありがとう」
黒井川はスマホをしまった。
「藤崎さん、亡くなった宮川さんの事御存じでしたね?」
「……私には何の事か?」
「またまた。あなた、ホスト狂いで、宮川さんに多額の借金があったそうじゃないですか。で、テレビの出演料や雑誌の原稿料は全て借金の返済に」
「……だから?それは、宮川さんに借金していた事だけでしょ?殺したのはわたしではない」
黒井川は目を閉じた。
「私にも見えます。2人の女が河原でネタを仕込んでいます。そして、1人の女性が宮川さんを殴る。その1人の女性とはあなたです。番組でも殴ったのは女だと言いました。当たりましたか?」
藤崎はタバコに火をつけ、
「証拠がないじゃない。わたしがあそこにいた証拠はあるの?」
「あります」
「何よ!」
「匂いです。警察犬投入しました。後で、ハンカチか何か提出してもらいます。まさか、霊能力であなたの匂いまで現場に届くと言う不思議な事がありえるでしょうか?」
藤崎は煙をフーッと吐き、
「……あり得ないでしょうね」
「口が滑りましたね。あなたが、女が殴ったと言わなければ気付きませんでした」
「わたし、本当に昔は霊能力があったんです。その人の守護霊と話したり、トランプの数字を霊視したり。信じて下さい、黒井川さん」
黒井川はうんうんと頷き、外に
「いいよ」
と、言うと警官が2人やってきた。
手錠を嵌められた藤崎の肩を黒井川はポンポンと軽く叩いた。
了
警部・黒井川シリーズ。「汚れた霊能力」 羽弦トリス @September-0919
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