第16話 モリモト村へ

 俺はマビル村へ戻って温泉につかりながら、考える。

 アンドロイド教は積極的に信者を増やすために、マッチポンプ的なやり方をとっているようだ。

 それを止められるのは俺くらいだろう。

 あと、今日、アクオスを仕留めた方法は禁止にした方がいいな。

 シリに連絡する。


「今日のような、アンドロイド教の魔人がかかわっている事件は、お前は探知できるのか」

「お前って呼ばない。あと、アンドロイドちゃんの魔力の残滓を感じとれば場所の特定は可能よ。ただし、そこで事件が起こっているかどうかは不明だけど」

「それで十分だ。とりあえず近い所からしらみつぶしに、事件を解決していこう」

 

 俺は昨日の話の通り、シリにアンドロイドの魔力が残っている場所を聞いて、そこへ向かった。

 ここがモリモト村か。そんなに村自体はそんなに大きくないな。

 しかし、郊外に見える畑はかなり広大である。しかし、何も生えていないようにみえるのは何故だろうか。

 収穫済みという事だろうか。


 『地図アプリ』でモリモト村の評判が書かれていた。

 『農業が盛ん』

 『とれたて野菜の食事がうまい』


 昼飯時だったので、食堂へ向かった。

 混んでいる雰囲気はない。

 時間的には昼飯時なのに人がいない。

 しかし、普通に営業しているようだった。

 とりあえず、中に入った。


 店内は広かったが、客が見当たらない。イスに座り女給さんが来るのを待つ。

 女給さんが水を持ってきてくれた。


「ここは野菜がうまいと聞いてやってきたのだが」

「大変申し訳ございません。現在、畑に作物を植えても成長しないという原因不明の状況になっているため、採れたて野菜の提供はできません」

「それっていつぐらいからかな」

「えっと、ここ2,3週間の間かと思います」


「それじゃあ今日出来る料理は」

「幸い、備蓄は沢山ありますので、普通の料理なら可能です」

「わかった。腹にたまるような料理を頼む」


 この状態は明らかにアンドロイド教の仕業だ。


 普通の料理を食べ終えた俺は畑へと向かった。

 畑には小さい苗が植えられていた。

 苗が植えられていない所は、種を植えている所だろうか。

 近くにいた農民に声をかけた。


「何でも作物が育たないと聞いたが、いつ頃からなんだ」

「そうなんですよ。旅の方。作物が急に育たなくなってね。あれは3週間位前だったかな」


 解決方法だが簡単である。

 俺はスマホを取り出し、『写真アプリ』を起動した。

 畑全体を映すことは難しいから、端からはじめよう。

 モードを『未来撮影』変える。

 するとスマホの画面の中の畑は作物が育った状態で映しだされた。

 その状態で『実行』ボタンを押してみる。

 すると、実際の畑の作物も育った状態に変化した。

 それを畑全体に対して繰り返した。

 農民は何が起こったかわからないようだった。


「とりあえず、一時的に農作物を成長させた。あとで収穫してくれ。あと、これはアンドロイド教の仕業だ」


 と、俺はアンドロイド教のやり口を説明しておいた。


「わ、わかりました。ありがとうございます。人を呼んでまいります。久しぶりの収穫なので皆がよろこびますでしょう」


 とりあえず俺は仕事が終わった。また、この村に滞在してアンドロイド教の魔人を待たないといけないので、宿の手配も農民にお願いしておく。


「さて、することも無くなったし、観光できるような場所もないよな。名物は食堂だけらしかったし」

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