第15話 ロスバ村での遭遇戦
まずは『天気アプリ』を起動させる。
「うわ、この一帯、一週間予報でもずっと降水確率0%だな」
俺は公式ペンシルを取り出し、0%の所を全て100%に書き換えた。
すると空が暗くなってきて、すぐに雨が降り始めた。
簡単な作業であった。
「うおおー雨が降ってる。降ってるぞー」
村中で大騒ぎである。
「シリ様じゃ。シリ様が奇跡を起こされたのじゃ」
これは多分、村長が叫んでいるのだろう。
しかしと思う。
根本解決にはなっていないんじゃないかと。
雨が降らない原因は何だったのだろうか。
少し様子を見るためにこの村に滞在することに決めた。
とりあえず踊りくるっていた村長をつかまえて、監禁されている詐欺師の所へ案内してもらうことにした。
それは村はずれの地下牢であった。
「ついに私を火あぶりにする決意でもしたのかい」
「お前は自由の身になった」
「へー、そんなこともあるのかな。ということは雨が降ったのね」
「私が1週間雨ごいを続けてもぜんぜん雨が降らなかったのに」
「お前は詐欺師じゃろが。どうせ雨が降るまで雨ごいをつづけることにより、あたかも雨ごいで雨が降ったように見せかける算段だったのじゃろ」
「うへーばれてら」
「とりあえずお前はどこへでも行くがよい」
こうして詐欺師は解放された。
おれは村長に少しの間、この村に滞在したいことを告げる。
「雨が降ってるんじゃ。解決じゃないかの」
「いや、俺がやったのは一時的に降らせているだけだ。俺が一生この村にいるならそれでもよいが、そういうわけにもいかないからな」
「そうか。わかった」
「ボブ爺さん、寝床だけは用意してくれないか」
雨は降り続けている。早速シリ像の落書きは消してくれるそうだ。
今はあてがわれた一軒家で何もせずにぼーっとしていた。
次の朝、落書きが消えたとのことで連絡を受けたのでシリの女神像のある中央へ移動した。
女神像の落書きは消えて、もとの女神像に戻っていた。とりあえず写メを撮っておく。
その時、村人がこちらに走ってくるのが見えた。
かなり焦っている様子だった。
「トオルさん、畑に見慣れぬ人が飛んでおります」
見慣れぬ何かということは女神関係だろうか。
俺は畑へと向かった。
そこには人が空中に浮かんでいた。
「これはどういうことだ。この地域は雨を降らないようにしていたはずだ。困っているときにアンドロイド教が雨を降らせて信者を獲得する。という計画がつぶれてしまったじゃないか」
「説明ありがとう。それならばお前を倒せば万事解決だな」
「お前はトオルだな。アンドロイド様から聞いている。お前にこの魔人アクオスを倒すことは無理だ。お前の攻撃はiPhoneを後ろからぶつけることぐらいだろう。ネタを知っていれば避けるのは造作もないことだ。そもそも空中に浮いている私にiPhoneを当てるのは不可能に近い」
「そうか。それならばこういう攻撃はどうだ」
俺は『地図アプリ』を起動した。
そこには赤い大きな点が表示されていて、ご丁寧に「アクオス」と名前まで表示されていた。
その点に公式ペンシルを使い、バツ印を付けてみた。
その瞬間、アクオスは消滅してしまった。
断末魔も聞こえなかった。
万能だな、公式ペンシル。
それにしてもこの攻撃は危険だな。
あと片も残さず倒せてしまうとは。
完全犯罪の成立だな。
とりあず村長に報告しに行った。
「根本原因が解決した。今後は定期的に雨が降るだろう」
「ありがとうございます。これからはシリ教を信じる者も再び増えると思います」
「そうなってくれるとありがたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます