第14話 ロスバ村には雨が降らない

 ある程度栄えていくのを見届けたおれは、再び旅に出ようと決意する。

 ここの温泉は気持ちよすぎるため、ずっと逗留してもよかったのだが、iPhoneXXの力があれば、もっと多くの人を助けることが出来るはずだ。

 シリに連絡する。


「近くに、困っている村か何かはないか」

「そうですね。近くにロスバという村があります。農業が栄えているのですが、最近は雨が降っていないので困っているらしいです」

「雨が降っていないのか。それは解決方法は簡単だな。そこへ行くとするか」


 俺はタクシーを呼んでロスバ村まで運んでもらった。

 ロスバ村について『地図アプリ』を確認した。

 どうやらシリ像があるようだ。

 ということはシリ教の村なのだろう。まずはシリ像を見に行った。


 シリ像はすぐに見つかったが、落書きがたくさんされていた。

 シリからline通話が入った。


「これはひどくないですか。シリちゃん泣いちゃいます。雨が降らないからでしょうか。天気は女神の管轄外なのです」

「そうだな。だが、農業をする人にとって雨は死活問題だ。女神にでも頼りたくなるだろうよ」


 まずは村人を探すことにした。

 郊外にある畑にたどり着いた。

 ぜんぜん雨が降っていないせいか、畑が干からびていた。

 近くにいた村人に声をかけた。


「この地域は雨は降らないのか。畑が干からびているようだが」

「旅の者か。そうじゃ。ここら一帯は雨が降らないせいで畑が干からびてしまったのだ。まったく作物が育たん」

「昔から雨が降らないのか。いや、そうだったらそもそも村なんて作らないか」

「雨が降らなくなったのはここ1か月の事じゃ。それまでは定期的に雨が降って作物も順調にそだっていたのじゃが」


「話が変わるが、中央のシリ像が落書きされているのは何でだ」

「あれか」そう言いながら村人は顔をゆがめた。

「雨を振らせることができるというシリ教徒が表れてな、雨ごいを一週間ほど続けたが、一向に雨が降らん。怒ったわしらが、その教徒とやらを監禁して、ついでにシリ教も信じられなくなり、落書きをしたということじゃ。ここではだれもシリ教を信じなくなった。あの詐欺師のせいでな」


「あんたも、もう信じていないのか」

「信じたいが、現実雨が降らない。あの教徒が詐欺師だったということを差し引いても、信仰が何も役に立たないと実感しておるよ」

「もしおれが今日中に雨を降らせたら、村人全員がシリ教を信じて、あの落書きを消してくれるか」


「お前さんもシリ教の教徒か何かか?」

「正確には違うが、まあ、そんなもんだ。で、どうだ乗ってくれるか」

「そうじゃの。今日くらいなら待とう。それでも雨が降らなかったら、お前さんは、どう落とし前をつけてくれるんじゃ」

「今監禁している、詐欺師と、俺を生贄にでもして、神にでも雨ごいをすればいい」

「うむ。お前さんのリスクが高いように思えるが、それでも良いなら構わない。この村は貧乏じゃから報酬などは出せんぞ。」


「それは構わない。シリ教を再び信じて、落書きを消してくれれば十分だ。あと詐欺師は逃がしてやれ」

「それなら構わん。監禁状態の詐欺師は扱いに困っていたのじゃ」

「なら交渉成立だな。俺はトオルという」

「わしは村長のボブじゃ。ボブ爺さんとよばれておる」


 俺はシリに連絡した。


「信仰が落ちていることと、女神像の話は聞いていなかったが」

「ついでじゃないですか。雨を降らせることができれば、私への信仰も復活する。簡単な話ですよ。お前は、アンドロイド戦の為じゃなく、この村のためにアーティファクトを取りに行かせたんだろ」

「あら、コルタナちゃんからキャッチホンが入ったから切るね。あとお前って呼ばない」


そして通話は切れてしまった。

 line通話でキャッチホンはないだろう。

 そしてキャッチホンでは誰から通話が来たかは知りえないだろう。

 それはそれとして雨を降らせる事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る