第11話 マビル村へ

 次の朝、あいにく雨が降っていた。

 移動にはタクシーを呼ぶから関係ないが。


 俺は『地図アプリ』を使い、マビルという村を検索した。

 アーティファクトが眠っているダンジョンがある村だ。

 結構離れているようだが、タクシーなら大丈夫だろう。


 『Udon Taxi』を使い、タクシーを呼んだ。

 雨の中、タクシーで移動する。

 暇なのでシリに連絡してみる。


「お前は、今回探しに行くアーティファクトがどんなものか知っているのか」

「もちろん知っているわ。内容は手に入れてからのお楽しみよ。あとお前って呼ばない」

「それはそうなんだが。俺の役には立つんだろうな」

「もちろんですよ。扱い方によっては何倍も役立つと思います。アイディア次第ですよ」


 そんな会話もしつつタクシーは移動を続ける。

 今回は長時間の移動だが、人に見つかったら、どんな反応をされるか分かったものじゃないな。

 あまり目立つのは避けたいが、この移動手段は捨てがたい。それともタクシーも『Udon Haitatu』の青年と同じでこちらの住人には見えてないのだろうか。


 途中、休憩をはさみつつ、マビル村へ向かう。

 やっとマビル村にたどり着いた。

 ちょうどお昼時である。


「お客さん、どうやらカサを持っていないようですね。トランクにビニール傘が入ってたと思いますので、持ってきますね」


 そういうと運転手はトランクからビニール傘を持ってきてくれて、俺に渡した。


「最近のタクシーはこんなサービスもしてくれるのか」

「いいえ、私が勝手にやっていることですよ。お客さんが満足してくれればそれで十分ですよ。雨の中、タクシーで移動したのに、降りたとたんに濡れるのも嫌でしょ」

「そう言うならありがたく使わせてもらうよ」

「それにこんなに安全な道を長時間利用してくれたお客さんだ。大切にしても罰は当たりませんよ」

「そうだな。ありがとう。また機会があったら利用させてもらうよ」


 俺はタクシーが何処かへと消えた後に、『Udon Taxi』のアプリを起動させて、チップを最大額払っておいた。


 マビル村は過疎化していた。門や建物はお金を作って立てられたものと思えるが、その後のメンテナンスがされていない。

 雨が降っている為、よけいに不気味に感じる。


 どうやら栄えていた時期はあったのだろう。その時期の建物が今も残っているように見える。

 俺は村で1件だけ営業中であった食堂へ行ってみた。

 食堂に客はいなかった。

 昼飯時なのにこれで営業は続けられるのだろうか。

 とりあえず俺は窓際のテーブルに座り女給がくるのを待った。


「あら、マビル村にお客が来るなんて久しぶりだね。もしかしてあんたもアーティファクト狙いさね」


 女将と呼んだ方がいい年齢の女性がやってきた。


「ああそうだ。とりあえず腹にたまる食事を頼む」

「わかったよ」


 女将は奥の厨房に向かって「ランチ大盛で」とさけんだ。


「しかし、最初に忠告しとくよ。アーティファクトはないさね」

「それはどういうことなんだ、詳しく聞かせてくれ」

「そうだね。あんた、ここの村を見ただろ。昔は栄えていたのさ。アーティファクトが眠るダンジョンがあるといって、噂になってね。そりゃ人が訪れたさ。そうすると色々と栄えていってね、食堂や宿は増えるし、それ以外のお店も増えて行った。この店だって、いつも満員だったさね」


「しかし、今はさびれている。ということはアーティファクトは発見されたのか」

「いや、逆さね。何もでなかったのさ。ダンジョンといってもそんな大きなものじゃなかった。攻略は一気に進んだね。モンスターも1匹残らず狩りつくされたね。それでも何も出なかった」


「そうかそれで、アーティファクト狙いの冒険者が去っていったのか。それでそのまま廃れてしまったと」

「そうさね。食堂も、うちだけになってしまったさね。こうして思い出したかのようにやって来るアーティファクト狙いの冒険者に忠告するのが役割みたいなもんさね」


「俺は確かな情報を手に入れてやって来たのだが」

「みんなそう言うさね。ま、食事が済んだら観光がてらダンジョンを見学してみるといいさね。さいわい、モンスターは出ないから安全に歩けるさね」

「もし、俺がアーティファクトを見つけたらどうなる?」

「どうもならないさね。今更なかったアーティファクトがあったとしても、それで村に人がもどってくるわけではないさね。この村はこのまま廃れていく運命さね」

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