第7話 シリの女神像

「朝ごはんができたよ。降りといで」


 女将の声が聞こえる。どうやら朝のようだ。すっきりと起きれた。

 俺は食堂のある1階へ降りて行った。


「トオル、どうしたんだい、その体、何かの病気かい?」


 まずい、すっかり忘れていた。何も考えずにからだをスリムにしてしまった。


「まあ、金貨を持っているような人だ。何があってもおかしくないか」


 深く追求されなかった。助かったのか。それとも日常茶飯事にこんなことがあるのだろうか。


「朝ごはんはパンとサラダだよ」


 焼き立てのパンと新鮮なサラダが皿にもられていた。

 よい匂いがする。

 サラダも色鮮やかである。

 見たことないサラダだけど、これならからだにも良いだろう。

 席について食べてみる。

 久しぶりにまともな朝食を取った気がする。


「今日、旅立つよ。差額は、また俺がこのロンロ村へ戻った時に泊まるからさ」

 俺は朝食が終わってから女将に話した。

「そうかい。それならかまわないが」

「弁当だけ作ってくれないか。ここのパンはおいしかったよ」

「わかったよ。腕によりをかけて準備させてもらうよ。ちょっと待ってておくれよ。それとこの村に女神さまの像はあるから参拝しておくんだね」


 そういうと女将は厨房へと下がっていった。

 弁当を準備してもらってる間、待ち時間があるな。その間だけでも村を散策してみるか。


 『地図アプリ』を起動させた。赤い点は見当たらない。この村は安全のようだ。

 女神の像がある場所が示されている。俺はそこへ移動した。


 そこは小さな礼拝堂のようだった。扉は開いていた。

 中に入ると、人はいない。奥に女神の像が配置されていた。

 見た感じ、本物の女神に似ている。が、


「ちょっと盛りすぎじゃないかな。あんなにかわいくないし、胸も大きくは」


 そこまで言いかけたらline通話の着信音がした。iPhoneXXを確認するとビデオ通話になっている。シリからであった。


「ちょっと、透さんそれは言いすぎじゃないかなー。女神ちゃん泣いちゃうぞ。ほらちゃんと見てよ。かわいいし胸だって」


 シリは画面の中で顔と胸をアピールしてきた。よくみると、そうかもしれなかった。

「今回は俺が悪かった。よく見るとシリも悪くないな。女神像に近いぞ」

「わかればよろしい」


 そのどや顔がなければもっと良いのだが。心の中で俺はつぶやいた。シリは俺の心の中は読んでいなかったようで、気づかれなかった。


「素直な透君にヒントをあげよう。この女神像を写メしてみて。ではではまたねー」

 ビデオ通話は切れてしまった。


 なんだろう。と思いつつも女神の像を写メしようとした。取る角度は気にせずに真正面から全身が映るように撮ってみた。


 パシャリ


 写メが撮れた音を確認して俺は、『写真アプリ』から画像を確認してみる。


「普通のシリ像だな」


 画像を確認した時に再び、シリからline通話が入った。


「おめでとうございます。『プリ連射』を拡大解釈し、『過去撮影』『未来撮影』することが可能になりました」

「そもそも『プリ連射』機能はiPhoneXXには付いていないはずだが。あと百歩譲って『過去撮影』はまだしも『未来撮影』ってなんだ」

「未来のiPhoneには『プリ連射』機能が付いているんですー。私はiPhoneの女神だから何でもありなのです。『過去撮影』ができるなら『未来撮影』ができてもおかしくないじゃないですか。おまけですよ」


 気にしたら負けだと俺は思い「そういうものか」と流した。

 それにしても過去も未来も撮影できるのか。

 それは面白い機能だな。

 事件でもあったら探偵役は必要なくなるな。


「何か物騒なことを考えていませんか」


 相変わらず鋭い女神である。


「そんなことは無い。俺は平和主義者だ。世界が平和になればいいと毎日願っているよ」

「私も世界がシリ教に統一されて、平和になることを願っています」

 

 話がそれてきたので、俺はそのまま通話を切った。

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