第5話 万能マネー

 さて、俺はどうしようか。

 まずは食事かな。


 『地図アプリ』を起動した。


 この村が表示される。

 食事で検索をかけてみる。


「おお、食堂がちゃんと検索されるではないか。便利だな」


 小さい村だと思っていたが、3件食堂がヒットした。

 そしてご親切にも星の評価までされている。

 コメント付きだ。

 『ここのご飯はボア肉がうまい』『ここの酒は水で薄めてある』などなど。

 だれが星とコメントをつけているのだろうか。

 考えたら負けかな。

 大金をもらったのは自覚しているが、無駄使いはしたくないので、一番安い食堂に入った。


「おお、かなり混んでいるな」


 ちょうど夕飯時であった。

 ちょうど1名席が空いたのでそこに座る。

 メニューがあったが、全く読めなかった。

 普通に人と話せたのだから、文字も理解できると思ったのだが、文字は別らしい。

 そこで俺はiPhoneXXのカメラを起動して、カメラ越しにメニューを見てみた。


「文字が日本語に変換されているな」


 しかし読めるからといってどんな料理かはわからなかった。

 俺は女将を読んで聞いてみた。


「女将、この金貨一枚でどれだけ飯が食べれるんだ」


 女将の顔が引きつり、金貨を見えないように手で隠した。


「あんた、それをどこで手に入れたかわからないけど、こんな場所でむやみに出さないでおくれ。金貨なんてここいらじゃお目にかかれない位高価な物なんだ。あんた襲われちゃうよ。見た目は普通の旅人なのに、どうしたんだいこれ。」

「そうだったのか。それは悪かった。ちょっと人助けのお礼でもらったんだ。しかし生憎、俺はこの金貨しか持っていないんだ。」


 ネルネコのやつ、天然なのだろうか。

 もっと細かい貨幣をくれてもよかったんじゃないか。


「この村に両替商なんてないしね。あんたも食事をできないのも困るだろう。よしわかった。1年間、朝夕の食事代と、2階が宿になっているからそれも込みで金貨一枚でどうだい」


 それが得なのか、損なのか俺には判断が着かなかった。

 しかし、金貨はまだあるし、よい落としどころだと思ったので、俺は女将に金貨を1枚渡した。


「よろしくな。俺はトオルという」

「私は女将でいいよ。よろしくね」


 たらふく食った。料理の量が半端なかった。

 味は俺の舌にも合うようだった。

 1年分の宿と食事代でも金貨は多すぎたから女将が気を利かせたのだろうか。

 料理の量が半端なく多かった。


「30代の体にこれはきつすぎる。明日からは食事の量を減らしてもらおう」


 俺が休んでいるのは、食堂の2階にある部屋である。とりあえず食と住も当面の間の分を確保できた。


 ちょうど鏡があった。

『カメラアプリ』を起動して、鏡に映った全身を『加工』により、スリムにした。

 これでコーラとポテチで作られた体ともおさらばだな。


「さて、とりあえず、この金貨をどうするかだな」


 数えてみたら999枚あった。

 この食堂にいる限り999年泊まれるということだ。

 それって死ぬまでここで暮らせるという事になる。

 しかしそれは面白くない。

 シリからのお願いもあるしな。

 この村は、村と言いつつ結構広い。色々と買い物がしたいし、ここの食事ばかりだと飽きてしまうだろう。


「電子マネーとして収納できないかな」

 『電子マネーアプリ』を起動させた。、金貨の近くにiPhoneXXを持っていってみる。

 すると金貨が消えてしまった。

 その時、シリからline通話が入った。


「電子マネーを拡大解釈して異世界でも使える『万能マネー』になりました」


 と一方的に言うと、lineは切れてしまった。

 画面を確認するとそこには結構な額の日本円が表示されていた。


「なるほど。わかりやすく日本円で表示されるんだな」


 アプリを確認してみると、取り出しボタンがあったので押してみると、どのいくら出しますかと聞かれたので、銅貨10枚を取り出した。


 どうやらこの宿に風呂はないらしい。この世界では風呂無しが当たり前だろうか。

 日本人としては1日1回は湯船に入りたい。

 チートiPhoneXXでも湯船に入る方法は思い浮かばなかった。


 今日1日でいろいろありすぎた。

 いきなり異世界に飛ばされて、チートiPhoneXXを持たされた。


 盗賊に遭遇した。

 でもそれがきっかけでネルネコと知り合えた。


 お礼として金貨も貰えたから。食事と宿にありつけた。

 なかなかにスリリングな1日だったと思う。

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