第2話 iPhoneXX《トゥエンティー》の可能性

 気が付くと俺は草原にいた。雲一つない青空がきれいだ。木陰で眠っていたようだ。

 右手にはiPhoneXXがあった。

 さっそくiPhoneXXを確認してみる。

 バッテリーのマークがむげんだいになっていた。どうやら本当に使いたい放題らしい。

 アンテナもWi-Fiになっている。こちらも圏外の心配はなさそうだ。


 lineを確認してみる。見慣れない友達が一人いる。名前は『女神シリ』となっている。

 とりあえず、よろしくのスタンプを送信する。

 すぐにスタンプが返ってきた。

 「こんにちは」と送信してみる。

 またすぐに「こんにちは」と返ってきた。

 「よろしくおねがいします」と送信すると、以下略。通話のアイコンを押す。すぐにつながった。


「お前、もしかして暇なの」

「ひ、暇じゃありません。異世界に送った直後だったので、心配で見守っていたんです。あとお前って呼ばない。私はシリです」

「そうか。それは悪かった」

「何もないなら切っちゃいますよ」

「ああ、わからないことがあったらまた連絡する」


 通話を切った。

 まずは現状の確認をしなければならない。

 どうやらiPhoneXXは普通に使えるようだ。

 そもそもどれくらい役に立つかは不明だが。


 からだの確認をしたいが、鏡がない。

 見える範囲で確認した所、Tシャツとスキニーの恰好では無かった。

 革の服とズボンを履いていた。

 この異世界では普通な恰好だろうか。


 体つきを確認したが、どうやら本当に現世でのからだのままのようだ。

 からだもチートしてくれたら助かったのだが。

 これでは走ったり、戦闘したりするのは難しそうだ。


 そういえば確認していないが、モンスターはいるのだろうか。

 顔も『カメラアプリ』で確認したが、そこには中年の顔が映った。

 若返りのチートもないらしい。

 からだは本当に現世のコピーらしい。

 アプリ内に『加工』のボタンがあった。

 確か『カメラアプリ』では自分の顔を加工できるものもあったはずだが、それが標準のカメラアプリに搭載されたとは聞いたことがない。


 iPhoneXXの新機能だろうか。

 とりあえず俺は『加工』ボタンを押してみた。すると色々な項目が出てきたが、『若返り』というボタンがあった。

 とりあえず押してみた。

 そうするとiPhoneXXに映っている俺の顔が若返った。


 写真を加工したわけではなく、リアルタイムに映っている俺の顔が若返った。


「懐かしいな。学生の頃の顔か」


 その時、シリからline通話の連絡が来た。


「カメラアプリの『加工』機能が拡大解釈されました。その為、『加工』の機能が現実にも反映されるようになりました」


 シリはそう一方的に告げるとlineは切れてしまった。

 今の言葉を解釈すると、顔を若返えさせることが出来るんじゃないか。

 俺はもう一度、『カメラアプリ』を確認し、若返り状態の自分の顔を確かめた。

 『加工確定』のボタンがあったのでそれを押してみる。


「カシャリ」


 あの写真を撮る時の音がなった。

 『カメラアプリ』を再起動させ、もう一度自分の顔を確認したところ、そこには若返った自分の顔が映っていた。


 この時点で俺は理解した。

 このiPhoneXXは最強のチートアイテムなんだと。

 女神も意地が悪い。

 チートアイテムならそうと言ってくれればいいのに。


 からだも、加工できるはずだ。

 ただ、自分のからだ全体を映す方法が思い浮かばない。

 鏡があれば簡単なんだが。ここは異世界である。鏡があるかは不明である。

 それまでは、このポテチとコーラで作られたからだと付き合っていくしかない。


 いろいろとアプリの機能を試そうと思ったが、ここは場所もわからない、草原である。

 衣食住の食と住が足りていない。

 着ているものはあるから、食住の確保が先決である。


 見渡す範囲に人工物は見当たらない。

 幸い天気はよい。

 時間は何時だろうか。iPhoneXXに表示された時刻が正しいと信じるなら、午後になったばかりだった。

 夜になるまでに、最低限、寝床は確保しておきたい。


「さて、どっちへ向かったら良いのだろうか」


 太陽があるから東西南北はわかる。

 しかし、地図がないからそれでは意味がない。俺は思いつく。


「『地図アプリ』でなんとかならないかな」


 そう思い、iPhoneXXを操作する。

 すると、当然のように異世界の地図が表示された。


「よし。これで何とかなりそうだ。一番近くにロンロ村というのがあるな。そこへ行こう」

 

 俺はロンロ村へ向かうことにした。

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